桓温39 桓鎮悪は病を殺す

桓石虔かんせきけん桓温かんおんさまの弟、

桓豁かんかつの長庶子である。幼名は鎮悪ちんあく


歳十七、八にして相当に堂々としており、

この頃からもう、召使いからは

「鎮悪郎」、つまり立派な士大夫として

扱われていた。


そんな桓石虔、桓温さまの側仕えとして

その仕事を手伝っていた。


桓温さまが手痛い敗北を受けた

枋頭ほうとうの戦いにも従軍。


この時、叔父の桓沖かんちゅう

敵軍に包囲を受けてしまっていた。

救援に向かおうとするも、

みな怖気づいてしまっている。


そこで桓温さま、

桓石虔を呼び寄せると、言う。


「石虔、聞いているか?

 お前の叔父が、

 敵の手に落ちてしまったそうだ」


それを聞いた桓石虔、

ふっざけんじゃねーですよクソ鮮卑、

と意気盛んとなる。


部下の朱辟しゅへきにサポートを命じ、

果敢にも数万の敵中に、

馬に鞭し飛び込んでいく!


その気迫に恐れおののき、前燕軍は

誰も桓石虔を阻むことができなかった。


こうして桓石虔は、

見事桓沖の救出に成功。

帰還する。


桓温さま以下、晋軍は

桓石虔のこの暁勇に大喝采。


一方の前燕軍は、

相当にビビったようである。


陣中で病に苦しみ、

動けなくなった者に対し、

「桓石虔がきたぞ!」

と言うと、その者は痛みも忘れ、

逃亡に入ったという。




桓石虔、司空豁之長庶也。小字鎮惡。年十七八、未被舉、而童隸已呼為鎮惡郎。嘗住宣武齋頭、從征枋頭。車騎沖沒、陳左右莫能先救。宣武謂曰:「汝叔落賊。汝知不?」石虔聞、氣甚奮、命朱辟為副、策馬於數萬眾中。莫有抗者、徑致沖還。三軍嘆服。河朔遂以其名斷瘧。


桓石虔は司空の豁の長庶なり。小字は鎮惡なり。年十七、八にして未だ舉ぐるを被らざるに、童隸は已にして鎮惡郎と呼ぶるを為す。嘗て宣武の齋頭に住み、枋頭を征せるに從う。車騎の沖の陳の沒さば、左右に能く先に救せる莫し。宣武は謂いて曰く「汝が叔は賊に落つ。汝は知るや不や?」と。石虔は聞きて氣を奮わすこと甚し。朱辟に命じて副と為し、馬を策して數萬の眾中に於く。抗うを有する者莫し。徑ちに沖を致し、還る。三軍は嘆服す。河朔は遂にして其の名を以て瘧を斷つ。


(豪爽10)




桓石虔

枋頭のこの戦いでの功績が大きいが、淝水のちょっと後までの西方守護の要の一人でもあった。ただこの辺を、晋書はものの見事にカットしてきてくれている。なんだよこの人の功績ぜってー面白いのによぅ! まぁないもんはないんで、あとは妄想で補完しましょうね。

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