桓温37 後見人、桓沖  

桓温かんおんさまが亡くなった時、

後継者の桓玄かんげんはわずか五歳であった。

そのため、その後見に桓沖かんちゅうがついた。


一通りの服喪が済んでから、

桓温さまの府で勤務していた者は

解散することとなった。


桓玄、桓冲と共に彼らを見送る。

すると桓沖、彼らを指さして言った。


「覚えておけ、霊宝れいほう

 彼らは皆、君の家に

 忠誠を誓った者たちだ」


それを聞き、桓玄は慟哭。

かれのこの様子を、

誰もが痛ましく感じるのだった。


さて、それから淝水ひすいの戦いの直後、

死亡するまでの間。

桓沖は自らの職務室を眺め、

常にこう語っていた。


「霊宝が成人した暁には、

 この部屋は、かれに返却するのだ」


その寵愛ぶりは、

自らの息子たちを

はるかにしのぐものであった。




桓宣武薨、桓南郡年五歲。服始除、桓車騎與送故文武別。因指語南郡:「此、皆汝家故吏佐。」玄應聲慟哭、酸感傍人。車騎每自目己坐曰:「靈寶成人、當以此坐還之。」鞠愛過於所生。


桓宣武の薨ぜるに、桓南郡は年五歲なり。服せるの始めて除かるに、桓車騎は與に故の文武を送りて別る。因りて指して南郡に語るらく「此れ皆な汝が家の故の吏佐なり」と。玄は聲に應じ慟哭し、傍の人をして酸感せしむ。車騎は每に自ら己が坐を目して曰く「靈寶の成人さるに、當に以て此の坐を之に還ぜるべし」と。鞠愛せるは所生に過ぎたり。


(夙惠7)




桓沖の振る舞いが「今は雌伏の時だ、後々これが全てお前のものになる」と言う感じになっています。つまり世説新語の解釈は「晋は将来桓玄のものだから、いまはぶっ壊さないためにも謝安に協力する」的な感じなんですね。そうであってもエモいし、そうでなくてもエモい。どう転んでも桓沖はエモい。

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