桓温16 文度ちゃん板挟み
そんな王坦之との紐帯を強めたい、
あるいは
そう思ってか、桓温さま、
自分の息子に王坦之の娘を嫁がせてほしい、
と依願する。
うーん、まぁそれはいいんですけど、
ちょっと一回親父に聞いてみますわ。
そう言って王坦之、パパである
「
王述、王坦之がもういい年こいた大人、
しかも既に人の親であるにもかかわらず、
凄まじい溺愛ぶりを示していた。
何せ、自分の膝の上に王坦之を乗せる。
えっ……。
「突然どうしたんだい文度ちゃん?
このパパに何か相談事かな?
言ってごらん? ん?」
「あ、……は、はい、その、
桓公が私の娘と、公のご子息とを」
そこまで聞いた王述、
いきなり王坦之を振り払い、
膝の上からぶん投げた!
「はぁ!? 文度! きさま、
その齢でもう耄碌したようだな!?
そこまであの男に
媚び諂わねばならんか!
良いか文度、あの男は武士だぞ!
何が悲しゅうて、この家の血筋を
蛮物に与えねばならんのだ!」
まーそうなりますよねー、
予想していた通りの展開ではあったが、
一応の報告はしておかねばならない。
王坦之、桓温さまの元に戻ると、言う。
「申し訳ございません、桓温さま。
既にわが娘には、その……
縁談が、取り決められていた模様で」
桓温が苦笑する。
「いや、大体事情は分かった。
親父殿だろう?」
まぁ結局、最終的に桓温さまの望みは
叶うんですけどね。
王文度為桓公長史。時桓為兒求王女。王許咨藍田。既還、藍田愛念、文度雖長大、猶抱著厀上。文度因言「桓求己女婚。」藍田大怒、排文度下厀、曰:「惡見、文度已復痴!畏桓溫面!兵那可嫁女與之?」文度還報云:「下官家中、先得婚處。」桓公曰:「吾知矣、此尊府君不肯耳。」後、桓女遂嫁文度兒。
王文度は桓公が長史と為る。時に桓は兒が為に王が女を求む。王は藍田に咨るを許す。既に還ざば、藍田は文度を愛念し、長じ大なると雖ど猶お厀上に抱著す。文度は因りて言えらく「桓は己が女の婚を求む」と。藍田は大いに怒り、文度を排し厀より下して曰く「惡しく見たり、文度は已に復た痴なれば、桓溫の面を畏れたり。兵に那んぞ女を嫁して之に與えんか?」と。文度は還り、報じて云えらく「下官が家中にて、先に婚せる處を得たり」と。桓公は曰く「吾れ知るなり、此れ尊が府君の肯ぜざるのみ」と。後に桓が女は遂に文度が兒に嫁す。
(方正58)
桓温の家柄は、一応前漢以来の家門と言うことにはなっていますけど、この段階だとほぼ戦争屋の家柄としてしか見られていない、それを王述が嫌った、と言う感じでしょうか。
一方で王述、文度ちゃんに対して微妙にライバル心を燃やしてるようなところがあるから、持ってきた縁談のおいしさに内心で嫉妬した、みたいな感じにも解釈できそうです。
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