王導36 桓氏は王導が好き

桓温かんおんさま一家は、

結構王導おうどうさまのことが大好き。


なにぶん桓温パパである桓彝かんいからして、

王導さまが司空しくうを拝した時に

その様子をおめかしして眺めに行き、

宮中に参内しようとする王導さまを見て


「王導すげえぞ、と話には聞いていたが、

 いや、本気でやべえなアレ」


と言いながら、思わず城の入り口まで

ついて行ったほどである。



そして桓温さまは桓温さまで、

王導さまの息子、王劭おうしょうに感服している。


時は、桓温さまがパパの爵位を継承しよう、

というときのこと。

爵位継承の儀式を執り行う人として、

当時侍中じちゅうであった王劭がその役にあった。


正装していた王劭を見て、桓温さま、

つい呟くのだ。


「鳳凰の子は、やはり鳳凰なんだな」




王丞相拜司空、桓廷尉作兩髻葛帬、策杖路邊、窺之。歎曰:「人言、阿龍超。阿龍故自超。」不覺至臺門。

王丞相の司空を拜せるに、桓廷尉は兩髻を葛帬に作し、杖を策して路邊にて之を窺い、歎じて曰く「人の言うに、阿龍は超なり、と。阿龍は故より自ら超ぜり」と。覺えずして臺門に至る。

(企羡1)


王敬倫風姿似父。作侍中、加授桓公、公服從大門入。桓公望之曰:「大奴固自有鳳毛。」

王敬倫の風姿は父に似る。侍中を作し、桓公に加授せんとせるに、公は服し、大門より入る。桓公は之を望みて曰く「大奴は固より自ら鳳毛有り」と。

(容止28)




桓彝

桓温パパ、東晋黎明期の名臣として名をはせていたが、蘇峻そしゅんの乱に際し部下の裏切りにあって殺されてしまった。この元部下及びその郎党をたった一人で皆殺しにしたのが、我らが桓温さまの立身出世のスタートである。


王導ジュニアは、えつてんこうきょう、劭、かい、と揃っています。それぞれがちょこちょこ出てきて正直よくわからん。



ところで桓温さんと王導さんとの人脈に

共通してる人物が一人いるので、

その人のこともここで紹介しておきますね。




会稽人の、虞𩦎ぐひという人。

元帝げんていの時代、桓温さまと一緒に

やんちゃをしていた。


が、その人物はすごかったらしい。

王導さまも言っている。


孔愉こうゆには才能があっても声望がない。

 丁潭ていたんには声望があっても才能がない。


 この両者を満たすのは、

 そなた以外におれようか、なあ?」


べた褒めである。

だが悲しいことに、

かれは若いうちに亡くなってしまった。



會稽虞𩦎,元皇時與桓宣武同俠,其人有才理勝望。王丞相嘗謂𩦎曰:「孔愉有公才而無公望,丁潭有公望而無公才,兼之者其在卿乎?」𩦎未達而喪。


會稽の虞𩦎は元皇の時に桓宣武と同俠にして、其の人に才理勝望有り。王丞相は嘗て𩦎に謂いて曰く:「孔愉に公才有れど公望無く、丁潭に公望有れど公才無し、之を兼ぬるは、其れ卿に在りたるか?」と。𩦎は未だ達せずして喪ず。


(品藻13)

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