王導22 サボタージュ  

顧和こわが成人して、最初に就いたのが

揚州従事、つまり王導おうどうさまの部下。


ある月の初日、お役所の門近くで車を止め、

何故か車の中で顧和さん、

シラミを潰すのに一生懸命。


その横を周顗しゅうぎの車が通り過ぎる。

始め何の気にも留めなかった周顗だが、

ふと心がざわつき、

引き返して顧和の車を覗く。


周顗と言えば当時のトップ官僚。

けど顧和さん、そんな人に見られてるのに

相変わらずシラミ潰しに大忙し。


周顗、顧和の胸を指して言う。


「君はいったい、

 どのような境地でおるのだ?」


顧和さん、

特に振り向くこともなく言う。


「これがまた、わたくしにも

 とんと分からぬのですよ」


うむう、と周顗がうなる。

その後王導さまに会うと、

こうコメントした。


「きみの属僚に、

 随分出世しそうな奴がいるな」




顧和始為楊州從事。月旦當朝、未入頃、停車州門外。周侯詣丞相、歷和車邊。和覓蝨、夷然不動。周既過、反還指顧心曰:「此中何所有?」顧搏蝨如故、徐應曰:「此中最是難測地。」周侯既入、語丞相曰:「卿州吏中、有一令僕才。」


顧和は始め為楊州從事と為る。月旦に朝せるに當り、未だ入らずの頃にして州門の外に車を停む。周侯の丞相を詣でるに、和の車の邊を歷す。和は蝨を覓め、夷然として動かず。周は既にして過ぎりたれど、反還し顧が心を指して曰く「此の中には何れの所有りや?」と。顧は蝨を搏ること故の如くし、徐に應えて曰く「此の中、最も是れ測り難き地なり」と。周侯は既にして入りたれば、丞相に語りて曰く「卿が州の吏中に一なる令僕の才有り」と。


(雅量22)




うーんこの価値観の相違。顧和死ねとしか思えません。


雅量って時々劉宋的価値観からしてもDis じゃねえのって話が混じってるけど、あるいはやっぱり、劉宋でも雅やかな行い扱いだったのかしら。周顗顧和と一世紀以上開きがあるから、多少は価値観にも変動はあるだろうけど、どうなんだろね。


二十一世紀的観点からすれば誤差範囲内なのかなー。



https://kakuyomu.jp/works/1177354054884883338/episodes/1177354054885500421

ちなみに排調18では、「此中何所有?」を周顗さんが王導さまに言われていましたね(明帝10)。そこから照らすと、以前王導に言われたころを周顗が仕返しとして顧和に言ってみたら鮮やかに返され、なるほど、そう言う返しもあるのかって感心した感じでしょうか。

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