王導18 庾亮東下の噂  

蘇峻そしゅんの乱平定の後のこと。

乱を平定した陶侃とうかんが死亡、

荊州の守りの後任には、庾亮ゆりょうがついた。


そして王導おうどうは丞相として、中央に。


そんな折、建康けんこうにやってきた人が言う。


「庾亮が攻めてくるかもしれません」


この頃、庾亮が荊州の兵を率いて

反旗を翻すのでは、

と言う噂が立っていたのだ。

なので、別の人が言う。


「王導さま、密かに戒厳体制を

 敷かれたほうが良いのでは?」


すると王導、答える。


「わしと庾亮は同僚ではあるが、

 それ以前に無官の頃からの付き合い。


 あれがもし、わしを攻めたい、

 と言うのであれば、

 わしは自宅で、平服にて

 あれを待とう。


 そなたらが警戒することなど、

 何一つないわ」




有往來者云:「庾公有東下意。」或謂王公:「可潛稍嚴、以備不虞。」王公曰:「我與元規、雖俱王臣、本懷布衣之好。若其欲來、吾角巾、徑還烏衣。何所稍嚴?」


往き來たる者有りて云えらく「庾公に東下の意有り」と。或るもの王公に謂えらく「潛かに稍嚴し、以て不虞に備うべし」と。王公は曰く「我と元規は俱に王臣と雖ど、本より布衣の好みを懷く。若し其れ來たらんと欲さば、吾れ角巾し、徑ちに烏衣へ還らん。何をか稍嚴せる所あらんか?」と。


(雅量13)




「奴が反旗を翻したいと思うのであれば、あくまでわしに対してである」という事なのかしらね。まー大体にして官位を持ったまま攻めてくる人たちの名目って「君側の奸を除く」だしなー。つうかこの辺ポスト蘇峻の把握が甘い人間にはだいぶつらい。つまり僕のことなんですが。

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