李勢1  桓温さまの勝負勘

成漢せいかん 帰義侯 李勢りせい 全3編



西府せいふ軍の軍権を引き継いだ桓温かんおんさま、

いきなりしょくを討つとか言い出した。


群臣総ツッコミである。


「正気ですか?

 李雄りゆう成都せいとを落されて以来、

 今の李勢りせいに至るまで、長いこと奴らは

 蜀に勢力を築き上げています。


 しかも成都を落すためには、

 三つの川を越えねばなりません。

 自然の堀が三重にも

 敷かれているようなものです。


 そう簡単には落とせませんよ」


だが、劉惔りゅうたんの見立ては違った。


「あれはやるぞ。

 何回か博打で勝負したことがあるが、

 奴は勝てん勝負には動かん男だ」




桓公將伐蜀。在事諸賢咸以「李勢在蜀既久、承藉累葉、且形據上流三峽。未易可克。」唯劉尹云「伊必能克蜀。觀其蒲博、不必得則不為。」


桓公は將に蜀を伐たんとす。事に在りて諸賢は、咸な以えらく「李勢の蜀に在すの既にして久しく、藉を承くること葉を累ぬ。且つ形は三峽の流れの上に據されば、未だ克せるは易からず」と。唯だ劉尹は云えらく「伊れ必ずや蜀を克つ能わん。其の蒲博を觀るに、必ず得ざれば則ち為さず」と。


(識鑒20)




李勢

バカ。忠臣を遠ざけ、荒淫に耽り、無事桓温に攻め込ませる隙をどでかく作って差し上げ、うまうまと滅ぶ。成漢の滅亡が 347 で、死亡が 361 年とか、よくもまぁ生き恥を晒せているものである。


五胡諸国のこと国名でなく、あくまで個人名で呼ぶところに「奴らは反逆者です」的なニュアンスが感じられますね。あとこのエピソードから感じられるのは、桓温と東晋の諜報機構が別ものであり、しかもその質が全く違っていた、という事。


まぁ「実態がどうだったか」ってところを言い出しちゃうと黙り込むしかないんだけどさ。あと劉惔さん、桓温さん別のエピソードでは樗蒲に負けてすかんぴんにされてますよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る