孝武5 西府の後継人事
王忱の後釜に、さて誰を据えようか、
という話が持ち上がる。
様々な人が、様々な思惑を交えて
人材を推挙していた。
その中でも、第一候補は
西府の枢要に携わっていた
ただし、その名望では西府の長たるに
足りない、と言うのが世論であった。
だが
何せ殷仲堪は孝武さまの腹心。
そう言う人に要所を
守ってほしいと願うのは、
政治的判断の良し悪しはさておき、
人情としては自然だ。
そう、政治的判断の良し悪しはさておき。
さて、決定こそしたが、
未だ詔勅は下されていない、
そのようなタイミングのこと。
名門
西府軍とも縁の深い人物であったから、
この人事については
非常にナーバスになっていた。
殷仲堪に問う。
「西府軍の長はなぜ決まらんのだ?」
「もう決まったよ」
!?
初耳である。王珣、殷仲堪に食いつく。
あの人か、この人なのか?
様々な人物の名を挙げるが、
殷仲堪、首を振る。
さて一通り挙げて、全部違った。
残ったのは、……
「も、もしかして、私なのか?」
「ははっ、まさか!」
などと話していた夜、
殷仲堪の西府軍長官就任の詔が発布。
これを見て、王珣は思わず部下に漏らす。
「殷仲堪ごときにそのような大任だと?
何と言う事だ、亡国の兆しを
目の当たりとしようとは!」
王忱死,西鎮未定,朝貴人人有望。時殷仲堪在門下,雖居機要,資名輕小,人情未以方嶽相許。晉孝武欲拔親近腹心,遂以殷為荊州。事定,詔未出。王珣問殷曰:「陝西何故未有處分?」殷曰:「已有人。」王歷問公卿,咸云「非」。王自計才地必應在己,復問:「非我邪?」殷曰:「亦似非。」其夜詔出用殷。王語所親曰:「豈有黃門郎而受如此任?仲堪此舉迺是國之亡徵。」
王忱の死せるに、西鎮にては未だ定まらず。朝の貴人は人に望み有り。時にして殷仲堪は門下に在り、機要に居ると雖も名を資せるは輕小なれば、人情は未だ方嶽を以て相許さず。晉の孝武は親近なる腹心を拔かんと欲し、遂には殷を以て荊州と為す。事の定むるも、詔は未だ出でず。王珣は殷に問うて曰く「陝西は何の故に未だ處分のあらざるや?」と。殷は曰く「已に人有り」と。王は公卿を歷して問うも、咸な非なりと云う。王は自らの才地を計るに、必ずや應に己に在れるや、と復た問うらく「我に非ざるや?」と。殷は亦た曰く「非なるに似たり」と。其の夜に殷を用うる詔は出づ。王は親しき所に語りて曰く「豈に黃門郎にして此くの如き任を受くる有らんや? 仲堪が此の舉は、迺ち是の國の亡ぶ徵なり」と。
(識鑒28)
王忱
殷仲堪が桓玄に負けたから、晋は一時桓玄に滅ぼされました。更に言えば、
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