武帝7 予譲を友とす
招聘を受けた。
が、そんな招聘、聞きたくもない。
親を殺され、しまいには
忠誠を誓った呉まで滅ぼされ。
このありさまで、
どう晋に仕えられようというのか。
なので諸葛靚、座る時には
常に
とことん晋という国を忌避していた。
武帝さま、昔は諸葛靚と仲が良かった。
あの頃のことをどうしても忘れられない。
なので何度も呼び掛ける。
やっぱりダメ。
それでもまだ諦めきれない。
そこで叔父の
諸葛靚の姉に間を取り持ってもらった。
さあ、ようやく再会を果たした。
諸葛妃にも同席してもらい、
歓迎の宴が開かれる。
「君と私は、昔はあれほど
仲が良かったではないか。
どうかその頃のことを
思い出してくれたまえよ」
武帝さまの懇願に、
しかし諸葛靚のリアクションは
涙の滂沱、であった。
「この
よくも仰せでありますな。
帝は臣より
お奪いになりました。
にも拘らず、臣には
顔に炭を塗って大いに汚し、
身に漆を塗ってかぶれさせ、
狂人の振りをし、
敵を討つ機会すらございません。
ろくろく志も果たせぬまま、
仇の前に連れ出された者の心中、
陛下にはご理解いただけましょうか」
この圧縮された痛烈極まりないヘイトに、
武帝は恥じ入り、逃げるように退出した。
諸葛靚後入晉,除大司馬,召不起。以與晉室有讎,常背洛水而坐。與武帝有舊,帝欲見之而無由,乃請諸葛妃呼靚。既來,帝就太妃間相見。禮畢,酒酣,帝曰:「卿故復憶竹馬之好不?」靚曰:「臣不能吞炭漆身,今日復覩聖顏。」因涕泗百行。帝於是慚悔而出。
諸葛靚は後に入晉し、大司馬に除せられ、召されるも起たず。以て晉室に讎有らば、常に洛水に背き坐す。武帝と舊有り、帝は之に見ゆるを欲せど由無し。乃ち諸葛妃に靚の呼ぶるを請う。既にして來たれば、帝は太妃が間に就き相見ゆ。禮の畢わるに、酒の酣わなれば、帝は曰く:「卿は故かしくも復た竹馬の好を憶ゆるや不や?」と。靚は曰く:「臣は炭を吞み漆を身にせるも能わざれば、今日に復た聖顏を覩う」と。因りて涕泗せること百行たり。帝は是に於いて慚悔し出る。
(方正10)
予譲・智伯
予譲は狂人の振りをして敵の油断を誘い、主君の仇を取ろうとした刺客。智伯が、その主君。智伯は
そこに当て込むと、諸葛靚は武帝を、復仇という形の忠烈もろくろく受け止めることもできない惰弱なる存在だ、と dis っていることになる。つーか世説新語の武帝 sage 半端ねえな。
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