武帝4  ふかふかの扇  

庾翼ゆよく荊州刺史けいしゅうししの任についた時、

ふかふかの扇を成帝せいていに献上した。

しかし成帝さま、これ中古じゃね?

と疑う。


すると侍中の劉劭りゅうしょうが言う。


「建物を建てれば、工匠が先に中にいます。

 また音楽を真っ先に聞くのは奏者です。

 庾翼どのが奉ったとて、

 よき物であったからでしょう。

 新しさ、は価値に含まれておりません」


後に庾翼がこれを聞くと、思わず呟いた。


「こう言う人こそ、帝の側に侍るべきだな」




庾穉恭為荊州,以毛扇上武帝。武帝疑是故物。侍中劉劭曰:「柏梁雲構,工匠先居其下;管弦繁奏,鍾夔先聽其音。穉恭上扇,以好不以新。」庾後聞之曰:「此人宜在帝左右。」


庾穉恭の荊州と為れるに、以て毛扇を武帝に上ぐ。武帝は是を故き物かと疑う。侍中の劉劭は曰く:「柏梁を雲構せらば、工匠は先に其の下に居す。管弦を繁奏せらば、鍾夔が先に其の音を聽く。穉恭の扇を上ぐるも好しきを以てなれば、新しきを以てならず」と。庾は後に之を聞きて曰く:「此の人は宜しく帝の左右に在らしむべし」と。


(言語53)




成帝

なんか原文だと武帝になっちゃってる。庾翼劉劭の現役時代の皇帝は成帝なので、おそらく皇帝の名前を間違えてる。不遜! 不遜!!! つーか気付けよ筆写した奴ら。お前らの常識的にいっちゃん間違えちゃいけねえレベルだろこれ。


庾翼

晋書によれば庾翼の兄貴「庾懌ゆたく」のエピソードらしいんですけどねこれ。どんだけ取材不足なんだよ! いや世説新語って結構意図的に登場人物入れ替えてくるけど、さすがにここまでよくわかんねえと意図なんか探りようねえよ!


劉劭

侍中になった、くらいのことしか伝わってない。ただその出自が劉裕りゅうゆうマニアにとってはちょっとわくわくさせられる。というのも「彭城ほうじょう人」「劉交りゅうこうの子孫」だ。つまり、一応の系譜上では劉裕の親族という事になる。本当かどうかは知らんけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る