曹叡6  高所の恐怖1  

韋誕いたん、と言う優れた書道家がいた。


明帝めいていさま、彼の字が大好き。

そこで新たに宮殿を建てた時、

宮殿の名前をあらわす看板を、

韋誕先生に書いてもらおうと思った。


ところがどこで工程を間違えたか、

うっかり看板が先に

宮殿に掲げられてしまった。


看板の高さは、地上から約 38m。

つまり、ビル約 11 階分の高さ。


明帝さまが仰る。


「韋誕すまん、

 梯子であそこまでのぼって、

 看板の字、書いてきてくれ」


鬼ですか。


この無茶振りに、

どうにかして応えた韋誕先生。


終わった頃には、あまりの恐怖に

髪の毛が真っ白になってた。


なので子孫たちに言う。


「字が上手くてもろくな目に遭わん。

 書道などやめておけ、やめておけ」




韋仲將能書。魏明帝起殿,欲安榜,使仲將登梯題之。既下,頭鬢皓然,因敕兒孫:「勿復學書。」


韋仲將は書を能くす。魏の明帝の殿を起つるに、榜を安んぜんと欲し、仲將をして梯に登らしめ之を題せしむ。既にして下れば、頭鬢は皓然たれば、因りて兒や孫に敕すらく:「復た書を學ぶこと勿れ」と。


(巧蓺3)



韋誕

このエピソードくらいしか残ってない。為政者としてはそれなりに出世してる。

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