第76話 安息8

 鐘の音が鳴り響く。

窓の外を覗くと夕暮れになっていた。

さっきの鐘は六の鐘だから午後4時ってことだろう。

そろそろ帰るか。


「リリィ。起きて」


ゆさゆさとリリィの体を揺する。


「んにゅ……」


リリィは目を擦っている。ゆっくりと、目を覚ますのを待った。


「寝ちゃった」


「うん。でも、2時間くらいかな。お腹いっぱいになったから眠くなっちゃったんだね」


「そうみたい」


「とりあえず、帰ろうと思うから本を片付けて来て」


「分かった」


リリィが私の膝の上から降りて、本を持ってとことこと歩いていく。

私も魔法関連の棚に本を返してから元居た席でリリィを待つ。


「返してきた」


「じゃあ、帰ろうか」


リリィの手を引いて帰る。

少し眠って元気があるみたいなのか少し機嫌が良いみたいだ。


「おや、おかえりですか?」


受付の人から声が掛けられる。


「ええ、今日はもう帰ろうと思います」


「そうですか。では、またいらっしゃる時をお待ちしております」


「はい。では、また」


「バイバイ」


私は会釈して、リリィは手を振って受付の人に背を向けて図書館を出た。




「今日は公衆浴場に行こうか」


「うん。わかった」


そう、ここには公衆浴場があるのだ。

流石、首都と言った所だ。お金も良心的で1コルで入る事が出来る。

私たちは大体、毎日のように来ている。


公衆浴場は大通りの十字路から南門に向けて少し歩いたところにある。


私達は30分程歩いて公衆浴場に着いた。

中で番台の人にお金を2人分の2コル払う。

それに貴重品も預ける。


「じゃあ、リリィは女湯の方だからね」


「……」


返事はないが、そのまま男湯の方に入っていく。

中で、籠の中に脱いだ服を入れていく。


全裸になったところで、腕を引かれた。

見るとリリィが男湯に入ってきてしまったようだ。


「あれ、女湯って言ったんだけど、入ってきちゃったの?」


腰を落として同じ目線で話しかけるがリリィは頬を膨らませてぶすーっとしている。


「お兄ちゃんはリリィの騎士様だから一緒じゃなきゃダメなの」


機嫌の悪いリリィは梃子でも動かないので仕方なく諦める。

まぁ、見た目9歳だからギリギリセーフだろう。

そうだよね?


布を腰に巻いて、リリィが脱ぐのを待つ。

少しして、リリィが全裸になる。

いつも通りの平坦だが、蠱惑的な体だ。

って、おい何考えてるんだ。


流石に人様にリリィの魅惑なボディを見せるわけにはいかないので!

いかないので! 布で体を覆ってから浴場に入った。


背中を洗いっこしながら体を拭いてから浴場に入る。

リリィはいつもの私の膝の上でゆったりと伸びている。


「あー癒されるなー」


体の疲れが癒される。

と言っても、今日は本を読んでいただけだけどね。

肩が凝ったんだよ。


と、リリィがこちらに向き直って、よじ登ってくる。一体何かな?


「ふぅー……」


「おぅふ!」


いきなり耳に息を掛けられた。


「お・に・い・ちゃ・ん」


耳元で呟かされる言葉に胸がドキドキする。


「な、なな、なんですか」


どもって変な声になってしまった。


「はむっ」


「あふん」


耳を甘噛みされた。

っていったいどうしたんだリリィ。今日はなんか魔性の魅力を感じるんだけど!


「い、いきなり何をしているのかね! リリィ!」


「今日、読んだ本に書いてあったから試してみたの」


何でもないかのように言う。

図書館かぁ! 子供になんて本を見せるんだ! けしからんぞ!


「ねぇ、お兄ちゃん。その布の下のおっきいのはなに?」


「ハッ!? マイサン!」


見て見ると、にょきにょきとテントを張って伸びているマイサンが!

まさか、こんな幼女に欲情してしまうとは!

浴場だけにね。って馬鹿かおい!


「ツンツン」


「あぅん、や、止めなさいリリィ」


マイサンを布の上から突かれた。

マズイ。不味いですよ! 

これは犯罪的行為だ! リリィさんもう止めて!

お兄ちゃん捕まっちゃう。


「こら! おいたはダメだよ!」


リリィを抱っこして膝の上に乗せる。


「ん、なんかお尻に硬いのが……」


沈まれマイサン!

頼む!

こういう時は素数を数えるんだっけか。


「1,2,3,5,7,11って治まるか!」


自分で自分に突っ込みを入れる。

と言うかこの状態が不味いのだ。

とりあえず、緊急避難としてリリィを横に座らせた。


でも、リリィはまた座ろうとよじ登ってくるが、なんとか押しとどめる。



しばらくして、マイサンが収まったのでリリィを膝の上に乗せた。

リリィはここがお気に入りのようだが、寿命が縮む思いだったよ。

特に今日は。


「と、とりあえず出るか」


「わかった」


そうして、公衆浴場を出て、帰る道中。


「お兄ちゃん」


「ん? なに?」


「ドキドキした?」


指に人差し指を当てて、こちらを潤んだ目で見てくる。

とても蠱惑的なポーズだ。

ごくりと喉が鳴った。


「そ、そんなことないですよ!?」


「お兄ちゃん。嘘が下手」


「はい、ドキドキしました」


「そっか。えへへ。やった」


うわ幼女凄い。リリィにしてやられました。

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