2通目 ①
「おい、郵便屋!郵便屋はいないのか?」
お昼ご飯を食べ終わり、一息ついていた時、玄関の扉の方から少し甲高い声が聞こえた。
愛莉は誰が尋ねてきたのかと思いながら、扉を開けた。
「えっと、ヒューモスさんですか?あの人なら…」
「お前はどうでもいい。いいから郵便屋を出せ!時間が無いんだ。」
愛莉の言葉を遮りながら、訪問者は慌てたように口早に言った。しかし、扉を開けるも愛莉にはその訪問者の姿をすぐには見つけることが出来なかった。周りを見渡し足元に目を向け、やっと見つけることが出来た。
愛莉はその声の主を見て言葉が出なくなった。そこには二足歩行をするハット帽を被ったうさぎがいた。そのうさぎは元の世界のうさぎより二回りほど大きいが、それでも愛莉の膝上ほどの大きさしかなかった。
言葉を失っていると、私の代わりに後ろからの声がそのうさぎに対応した。
「全く、時計屋のうさぎさんや、毎度毎度そんなに焦らなくても良いでしょうに。」
「私は焦っているんじゃない、時間を有意義に使うため日々生活しているのだ。
お前のようにのらりくらりと過ごしてるやつとは違うんだ。」
「まぁまぁ、そう焦らずに。ひとまずお茶でもいかがかな?」
「いや結構。この前も後もティーパーティーばかりだからな。」
「またやってたんですかい?君たちも飽きないねぇ。」
「ティーパーティーに飽きるも何も無いだろう。」
「まぁまぁ。それで今回のご要件は?」
「うむ。それを話す前に一つ質問をしてもよいか?」
「なんでしょう?」
時計屋うさぎが突然、ただ呆然と会話を聞いていた愛莉の方を指さしてヒューモスに訪ねた。
「こいつはなんだ?」
「あぁ、その子はね。アリスだよ。」
「ヒューモスさん!だから違いますって!私は…。」
「アリス…。そうか。この子がお前のアリスか。」
ヒューモスの言葉に訂正を入れようとするとまたもや時計屋うさぎに遮られてしまった。ただ、愛莉には遮られたことに対する怒り以上に、時計屋うさぎの言った一言が気になり、聞き返した。
「お前の…?」
「まぁ、そんなことはどうでもいい。依頼だったな。この招待状を届けてくれ。なるべく早くな。」
愛莉の質問は聞こえていないようで、時計屋うさぎは依頼をさっさと話した。
「かしこまりました。」
「そんで、もう一つあるんだが…。」
「そちらの方は奥で。」
「そうだな。」
そう言うと、彼らは店の奥へと消えていった。
それから一時間ほどして奥から戻ってきた。
「じゃあ、あとは頼んだよ。」
「もちろんでございます。」
すると時計屋うさぎはやはり慌てたように、店を飛び出していった。
そして、愛莉たちの手元には宛先も何も書いていないうさぎの毛のような真っ白な手紙が残されていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます