第四幕
朝から大雨が続く日は、空模様と同じようにどこかどんよりとした気分になる。そんな気分のまま六限まで過ごし、これから部活。今日は玄関で夢と会ったので、そのまま一緒に行くことにした。
ちらっと確認したら立夏はもう部活の方に行っているらしい。
「おはようございまーす。」
「おはよーでーす。」
うちの部では来た時はいつでも『おはよう』、帰るときには『お疲れ様』と言うのが決まりとなっている。入部当初は慣れなかったこの挨拶も、今となってはすんなりと出るようになった。最近では他クラスの友達にまでお昼に『おはよう』と挨拶をして不思議な顔をされることも増えてきた。慣れって恐ろしい。
「おはよう…って、守谷さんも来たのね。来る前に連絡入れるの忘れてた。」
「どうかしましたかー?」
「ごめんね、今日雨降ってるから大道具の活動無しにするつもりだったの。前まで部長だけだったから連絡しないのが染み付いちゃってて…。」
部長だけの時は連絡しないのか、と思ったが部長だし、監督責任のようなものがあるのだろうか。そう思いつつ、この前の立夏との話を思い出すとそれ以外にもあるのかもと、どこか変に勘くぐってしまう。
「あーそうなんですかー。でも、作業とか大丈夫なんですか?」
「順調に進んでるから、そんなに心配しなくても大丈夫よ。」
「ならお言葉に甘えますねー。
ゆっちゃん、また明日ねー。」
「あーうん、また明日ー。」
そう言って、夢は雨の中帰っていった。そして、夢を見送る間もなく練習は始まった。
「だーかーらー!もーほんと聞き分けないなー!」
「先輩こそ!もう少しこっちの意見も聞いてください!!」
「聞いた上で言ってんでしょ!!」
「ぜんっぜん、そんなふうに見えませんけど!!」
また始まった。いつものように立夏と金山先輩が言い争い始めた。今、堀部先輩は花村くんと別室で音響の相談をしているため、この場を収めるのは必然的に私になる。ひとまず二人の間に入って、静めよう。
「はいはい、二人とも落ち着いてください。」
「落ち着けないよこんなの!」
ただ、今日の立夏はどこかおかしかった。
「今日はどうしたのよほんとに。」
「どうしたもこうしたもないよ!なんかもう…!!」
どこか苦しそうに言う立夏の気持ちを理解できない自分がいた。
そんな私より先に声をかけたのは金山先輩だった。
「あんた、今日はどうしたの?なんかいつもよりカリカリしてるけど。」
「先輩には関係ないです!」
「ちょ…!」
先輩にその言い方は無いだろうと止めようとするが、当の本人は一切気にしてないようだった。
「それなら誰なら関わってもいいわけ?」
「そんなの…。」
言葉をつまらせ、何故か私の方を見る立夏の目に、何故か私は怯えて、逃げたくなってしまった。
「はい、ストップ。」
騒ぎを聞いたのか、手を叩きながら堀部先輩が部屋に入ってきた。ドアの前では花村くんが不安そうにこちらを覗いている。
「
「ちょ、堀部先輩!」
「わかりました。お疲れ様です。」
「立夏!」
帰れという先輩の言葉に、驚いている私に目もくれず、立夏は素っ気なく答え、自分の鞄を取りながら帰ってしまった。
私は乱暴に閉められたドアをただ眺めることしか出来なかった。
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