第三幕
「あーつっかれたー!」
「ほんとだねー。」
部活帰り、私達三人は帰る方向が同じなため、一緒に帰ることがほとんどだった。
もうすぐ夏で、日も長くなりだしたにも関わらず、当たりはもう真っ暗で進む道の先を街灯が真っ直ぐ照らしているのが、はっきり見えた。日中は早く衣替えにならないかとうんざりしているブレザーを、今は肌寒さが突き抜けて感じられる。
そこに練習から来る疲労が重なり、私と立夏の足取りは少し重たいものとなっていた。
「りっちゃんたちは今日何してたの?」
「でも変わんないよ?ふつーに一本通してただけ。あ、でも堀部先輩に結構怒られたかな…。」
「いや、立夏は金山先輩に一番色々言われてたじゃん。」
「あの人には怒られたんじゃなくて、こっちが色々言ってんの!」
「りっちゃん相変わらずだねぇ。」
「確かに入部してからずっと言い合ってるよね。」
「向こうがなんか突っかかってくるだけだし…。」
「そういう割にちゃんと相手するもんね。」
「それに立夏からも突っかかってくよね。」
「そ、それは〜…。」
図星だったのか、思い当たるところがあったのか、立夏は言葉を濁らせた。
「そ、そう!大道具の方はどうだったの?」
自分の話題から逃げるように、夢に話を振るが、流石に無理があるだろ。突っ込まないけど。
「んー?別に普通だよー?」
「結構順調な感じ??」
「もー超順調ー!先輩達も色々教えてくれるしー!」
「って、先輩基本部長だけでしょ!」
「でもー、堀部先輩も結構手伝いに来てくれるよー?」
「確かに結構大道具の方行ってるよね…。」
「てか、やっぱりあの噂ほんとなんじゃない?部長と堀部先輩が…!」
「立夏って、ほんとそういう話好きだよねぇ…。」
「えーじゃあ優希は興味無いっての??」
「いや、別にそうじゃないけどさぁ…。」
「ならいいじゃん!噂するくらいー!」
「でも!やっぱり同じ部活な先輩なんだし変な目で見ない方がいいんじゃない?
それに、この場合夢が一番きつい立場じゃん!考えさせない方がいいんじゃない?」
「え、私ー?なんのことー?」
とぼけたように夢は返すが、ほんとに話をほとんど聞いていなかったのだろう。夢はきょとんとした顔で、私達二人の事を交互に見ていた。
「まぁそれもそうか…。」
やっと諦めてくれたようで立夏は話を辞めた。
正直、私は恋愛がよくわからない。もちろん興味が無い訳では無いが、クラスや部活の人達を思い浮かべて、恋がどんなものか考えても全くわからない。付き合うと言われても、何をすればいいのか、全然わからない。いや、こんなこと考えてる時点で遠い話なのだが、いつか私にもわかる日が来るのだろうか。
もしかしたら立夏や夢は知っているのかもしれない。もしそうなら、聞いてみようか。
はっずかしいけど。
「あ、じゃあうちこっちだしまたね。」
「あぁ、うん。またね。」
「まったねー!」
そんなことを考えてるうちに、立夏と別れる道まで来ていた。そして立夏は家へと帰っていった。
「優希のああいう所、つまんないなぁ…。」
二人と別れてから、うちはぼそっと零していた。いや、何言ってるんだよ。もし聞かれてたら…と、後ろを見ても誰もいなかった。安心して、とりあえずうちはまっすぐ家に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます