第11話

「…ということで、夏休みの生活にも…」

長ったるい先生のスピーチに、私は蒸し暑い体育館で眠気と戦っていた。明日から夏休みということで全校が浮かれていた。ただ私はこれから一ヶ月以上先生に会えないと思うと、夏休みが辛い。もう寝てしまおうかと考えていると、校長先生の話が終わった。

あとは表彰と、諸連絡かな…?

そう思っていると壇上の校長先生が続けた。

「最後に言っておかなければならないことがあります。突然ですが養護教諭の島田先生が本日までで本校を去ることになりました。最後に挨拶をしていただきたいと思います。」

…え、今なんて?

頭の処理が追いつく前に先生が壇上に現れた。

「えー、この学校で2年半、スクールカウンセラーとしてこの学校に勤務させて頂きました。まぁ、教壇に立ったことは無いのでほとんどの人が俺のことを知らないと思います。なのでここからは、俺のことを知っている人に対して言います。まぁもちろん、知らない人にも言いたいことを言うけどね。」


そんなもの聞きたくない。


「君たちは、初めて出会った時からずっと強くなっている。それは俺がどうこうしたわけじゃない。君たち自身が成長したんだ。俺はただ背中を押しただけ。

君たちはこれからももっといろんな人と出会って、もっと成長するだろう。その背中を押すのは今いる誰かかもしれないし、これから会う誰かかもしれない。でも、君たちは確実に成長していける。もし成長できないことがあれば、それは誰かに出会うのをやめた時だ。だから、それをやめないでほしい。怖がらないでほしい。」


お願いやめて。


「君たちが、ずっと成長し続けていられるようなそんな出会いをこれからもしてくれ。」


そんなの、私にとってはあなただけだよ、先生…。


降壇する先生を見ながら私は胸が苦しくて、胸をずっと抑えるしかなかった。


私は先生が帰るまで、車の前にいた。先生が出てきて、私を見た時、すごく申し訳なさそうな顔をした。

「先生…。」

「…最後まで、見てやれなくてごめん。」

私はそんなことを言う先生に、待っている間言おうと思っていたことを言った。

「先生、最後に相談してもいいですか。」

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