第8話

「さ、最近ほんとに日が短くなったね。」

「そうだな。」

「………。」

さっきからずっとこんな調子だ。私は緊張して話題が何も思い浮かばず、なんとかとりとめもない話題を見つけても生返事しか返ってこない。普段から話は基本私から振っていたせいもあってか会話が一切弾まない。

「そういえば、この前いたお前の友達…村瀬と高橋だったか?最近お前のこと心配して保健室うちにたまに来るようになったぞ。」

「え?リラとひゆが?」

今思うと確かにたまに二人ともいなくなる時はあったが先生のところだったのか。

「村瀬の方は特にお前のこと心配してるみたいだぞ。」

「そうなの!?」

意外だ。そういうのを一番心配するのはひゆだと思っていた。


「いい友達、持ったな。」


そう言いながら先生は私の方を見て少し笑った。ただ、その時の先生の笑顔は、いつもの不適な笑ではなく、世界一優しい笑顔だった。その笑顔を見て、私の心臓は先生に聞こえそうなくらい大きな音を立てて鳴り響いた。

「ん?着いたんじゃないか?」

慌ててあたりを見るとそこには見慣れた住宅地が並んでいた。

「あ!うん!そこの家!」

心臓の音を誤魔化すように私は大きな声で家の場所を指さした。

「き、今日はほんとにありがとね!」

「あぁ、また学校でな。」

「う、うん…。」

緊張してお礼を言うと先生は軽く答えて行ってしまった。先生と別れを言う時、私はなぜかもう先生がそばにいてくれなくなる気がして、行かないでと言いそうになってしまった。その気持ちは先生の車が見えなくなるまで見送っている間、大きく膨らんでいった。


車を少し出してひかりから見えなくなってから、俺は少しだけ車を停めて、携帯を確認した。メールが1通届いていた。

『先日はありがとうございました。とても楽しかったです。最近近くにできたフランス料理店をご存知ですか?もし宜しければ、ご一緒にいかがですか?』

俺は少し考えてからそのメールに返信をしてから、エンジンをかけ直し、家に向かって車を進めた。

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