第7話
あれから何週間かたった、ある火曜日の放課後。私は誰もいない教室で顔を真っ赤にしながら、脳内がグルグルしていた。
「夢じゃないよね…?」
この言葉も、もう何回言ったかわからない。
こうなったのもほんの数十分前―
もう日も短くなってきたのかいつもの時間のつもりが随分と暗くなってしまっていた。朝の天気予報のとおり、空模様も雨が降り出しそうである。
「あー…そろそろ帰らなきゃ…。」
「ん?帰るのか?」
外を見ながら、名残惜しくそんなことを呟くと珍しく先生が反応した。
「え?うん、もう時間だし。」
「そうか。」
そう言うとおもむろに帰り支度を始めた。
「あれ?先生ももう帰るの?」
「もう終わったからな。だから今日は送ってやる。」
「…え?今なんて?」
「ん?嫌だったか?」
「嫌ではないけど…い、いいの?」
「もうこんな暗いし、危ないだろ。ほら、支度してこい。校門の外で待ってるから。」
―と、いうわけである。
ひとまず支度を済ませようとするも先生の顔が出てきて集中出来ない。
なんとか荷物をまとめ、心臓が高鳴るのを抑えながら靴箱まできた。
「先生に送ってもらうってつまり帰りまでずっと一緒…。」
当たり前のことなのに、改めて口に出すと顔が熱くなる。学校では気にもしなかったことなのに、緊張してしまう。ちゃんと話せる?髪まとまってる?服装は大丈夫?そんなどうでもいいことを気にしながら、私は校門を出ていった。
少し行ったところに、いつも教室の窓から見つめていた先生の車があった。そっと中を覗こうとすると窓が開き、先生の顔と数十センチの距離になっていた。飛び退いた私を気にもとめず、先生はいつもの口調で言った。
「お前、人の車を覗こうとするなよ。ほら、早く入りな。」
そう言って助手席側のドアを開けた。
「お、お邪魔します…。」
緊張気味に入りながら中を見回すととてもキレイに整頓されていた。そして何より、先生の匂いで満たされていて、まるで先生に抱きしめられているような感覚になった。
「じゃあ出すぞ。道案内はよろしくな。」
そう言いうと、私と先生を乗せた車は走り始めた。
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