第6話
「ん…。あれ、私寝てた!?」
「あぁ、おはよう。ぐっすりだったぞ。」
「やば!ヨダレたれてない!?」
「真っ先にきにするのそこかよ。」
「え?あ、時間…。」
ふと壁の時計を見ると1限目どころか2限目の終わりが迫っている時間になっていた。
「え、やばい…。」
「ま、もう少し寝てろ。」
そう聞こえると、私の世界は真っ暗になり、先生の手に優しく外の世界から切り離された。この手は私の心をいつも大きく揺れ動かす。ただ、さっきまでのまどろみとは違い、大きく鳴り響く心臓の音が邪魔で寝ることなんてできなかった。
「ちょ、せ、先生…。」
嬉しいけど、恥ずかしさのあまり心臓が壊れてしまう。少し離れてから目の周りの肌が外の空気に触れ、保健室の中とはいえ少し冷たく感じた。
―キーンコーンカーンコーン…―
2限目の終了のチャイムが鳴った。
「あ、そ、そろそろ教室戻るね。」
なんとか保健室から出ようとした時、遠くからこちらに向かってかけてきた。
「ひかりちゃあああああんんん!!!」
体育でいつもビリのひゆがものすごい勢いで抱きついて来た。
「え!?ちょ、何!?」
「ひゆのやつ、朝からずーっとひかりのこと心配してたからな。」
「りっちゃんが心配してなさすぎなんだよぉ!」
「失敬な、私だって心配してるよ。
ひかり、大丈夫?」
後からゆっくりついてきたリラまでいつもにも無く心配そうな顔で見つめてきた。
「そいつら、1限の終わりにも来てたしな。」
先生が奥から声をかけて、私は本気で二人を心配させてしまっていたことに気づいた。
「あ、あの…心配かけてごめんね。ほんと何でもなかったの、ちょっと寝不足気味だったのかな?」
私はこんなに心配してくれた人にまで嘘をつくのか。そんな自分に嫌悪感すら抱いてしまう。
「なぁ、もしかして、中島たちが言ってたこと、関係あるのか?」
「え…?」
いきなり核心を突かれて口ごもってしまった。
「やっぱりそうなんだな…ごめん、もっと早く言ってるの気づけばよかったんだけど…。」
「りっちゃん、かっこよかったんだよ〜?
『私の友達の悪口言ってんな!!』ってすごい怒ってたもん!」
「い、言うなって!なんか恥ずかしいだろ…。」
「照れてるの〜?」
「だからっ!
でもまぁ、私の大事な友達を陰ででも悪く言われたくないからな。前がどうとかあんまり関係ないし。」
「私達は、今のひかりちゃんが好きだもんね〜。」
二人のやり取りをただ私は呆然と見ていた。そしてまた、心の底から何かが溢れてきた。たださっきと違うのは、それが涙にではなく、満面の笑顔になって出てきたことだけだ。
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