第14話 人間レベル

 会議室で仲間と話していた。みんな同じ、つるんとした病衣服を着ている。これから検査なのだ。

 サイレンが鳴った。チェックが始まる合図だ。整列しなければ。

 隣に立つロングヘアがさみしそうにつぶやいた。

「私なんてダメだよ……。レベル1だもの」

「えー、そう? そうは見えないけど」

 逆隣に立つショートヘアが顔を覗かせてなぐさめる。しかしロングヘアは首を振って、私なんてとくり返した。

 確かに上はレベル5まであるけど、彼女らはレベル3くらいのはずだ。仕事の早さ、判断力、人柄、どれを取っても優秀といっていい。

 自分は仕事も遅いしミスも多いから、レベル1なのは目に見えている。最低レベルでも落ち込むどころかそれでいいと思ってる。そもそもレベル1の者など、ここにいる誰からも相手にされないことが多い。

(だから「レベル1」=ダメと言う仲間の言葉は当然だ)

 だけどこうして優秀な仲間に受け入れてもらっているし、自分もうれしく、仲間の寛容さも誇らしい。だから落ち込まないでほしいと思った。

 ショートヘアがロングヘアに話しかける。

「ほんと? あなた、レベル1?」

「きっと、そう。あれもこれもダメだもの」

「そうかなあ。そう思わないけど」

 自分も「そう思わないよ」と言ったが、ロングヘアは「でも」と顔をさらに曇らせたので、つい口に出た。

「そんなにレベル1は悪いこと?」

「えっ」

 ロングヘアが言葉を詰まらせたとき、うるるるるというエンジン音が近づいてきた。

 るるるるるると音を上げながら古いUFO(チェックと呼ばれている)が窓の外に現れた。そこから乱暴に自分たちにライトを当てる。ライトが当たっている間だけ、胸の上に数字が浮かび上がった。

 1

 ほらね。自分はレベル1。

 ライトが外れると数字は消え、ほかの仲間に当てていく。1、2、2、2、1、1と次々数字が浮かび上がっては消えた。次第に会議室の中がざわめきだす。

 それもそのはず、3がいないのだ。驚いた。前回はかなりの数が3だった。ロングヘアもショートヘアも3だったはずだ。それなのに彼女たちまでレベル2になっていた。また当局がレベル基準を上げたんだろう。

 チェックは別の棟へ飛び去った。

 誰もなにも言わなかった。落ち込んだ雰囲気のなか、自分はどうとも感じなかった。レベル1のままでぜんぜん構わない。

 というか、レベル1はそんなに悪いこと? ねえ?



 ここで目が覚めた。

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