第6話 もののけ連れ
「誰も気づいていないみたいなんだけど、特別教室になにか、居るとしか思えないんだ。誰かに話せば笑われるから言わなかったんだけど」
それを聞かされた自分は、怖がるどころか納得した。
ちらり横目で特別教室を見ると、使われていない教室の小窓からこちらを伺うように黒い影が揺れたのがわかった。ひとつしかない目がぎょろりとこちらを見ていたので、あわてて素知らぬフリをして目をそらした。
あれだろう。
かといって、なにをするわけでもないが。自分の隣に座っている白い獣、もののけ先生さえ、自分以外に見えていないし。もののけ先生は片目を開けてささやいた。
「おまえは首をつっこむなよ?」
はいはい、と手で先生を追い払いながら「確かに居るみたいだね」と答えた。
勇気をもって告白したクラスメートは「だよな! そうだよな!?」と安堵と興奮が混ざった顔でうれしそうに笑った。
そうだよな、うれしいよな。自分ももののけ先生がほかの人に見えていたら
なにか嬉しいだろう。
部活に行ったクラスメートと別れ、廊下を歩いていたら背後から追ってくる気配があった。じわり、じわりと近づいてくる。
特別教室にいた、あいつかな。
こちらが足早になると、その気配が襲いかかってきた。
「マテエ。オマエハ、オマエハ」
やばい。呑まれる。
その瞬間。
「貴様にはこいつはくれてやらんわ! この下級めが!」
「ぎゃ、ひいいっ」
自分の影に隠れていたもののけ先生が影に食らいついた。
影は悲鳴を上げて散った。
「ありがと、先生」
「貴様はなんでそう妖物(あやかしもの)につきまとわれるのだ!! のん気なツラしてうろうろするな!!」
「んなこと言ったって、あっちが勝手に…」
「やっかましいわ!!」
もののけ先生のお小言はしばらく続いた。
ここで目が覚めた。
(たぶん『夏目友人帳』が好きなせいで見たと思う)
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