第二章 樹海編

第8話 樹海と幼女

無事?に洞窟ダンジョンを抜けた千尋とさらとひろ。


その先に待っていたのは樹海だった。


「なあ・・・千尋?なんでお前そんなに強いんだ?修行場でそんなにがんばったのか?」


「んあ?あぁ・・・まぁ、な。」


歯切れの悪い返事が返ってきた。千尋にしては珍しい。


「なんか・・・あったのか?」


「お前に・・・話したことなかったかな・・・。まぁこの機会だ。言っておくよ。

俺はな・・・まぁお前の知ってる通りのシスコンだ。妹はいない・・・なんてこと言ったんだが、実はいるんだよ。妹。」


「妹いたのか・・・。」


「あぁ。まぁ俺の妹・・・千夏っていうんだけど、そいつがさ、産まれてきたときから病弱でさ、病院に

入退院の繰り返しをしていたんだわ。

お前と遊びに行った帰りとかに病院に行ってお見舞いとかしてたんだわ。

ほら・・・うちの家って父さんいねえじゃん。母さんは俺と千夏のためにがんばって働いてるから、自宅でも病院にお見舞いにくるのもいつも俺だったんだわ。こっちの世界に飛ばされる前の日・・・

妹が救急搬送されてさ、危篤状態みたいなこと言われたんだ。

そっからのこの異世界だよ。まいっちゃうよな・・・。向こうの世界に妹がいて・・・。

でもさ、アリスちゃんに聞いたんだわ。その人が望むのであればこちらの世界で出会うことができるかもしれない・・・てさ。

そんなこと言われたら俺・・・頑張るしかないじゃん。俺しかいねえんだ。あいつには・・・千夏には。

俺がついていなきゃだめなんだ・・・」


「え、でもさ、こっちの世界に来るってことは、俺たちみたいにマチルダに殺されるとか、向こうで死ぬことくらいしないとこっちの世界に来ることができないんじゃないのか?」


「よくわかんねえけど、そんなことないみたいだ。アリスちゃんに必死に頼んだんだ。

そしたらアリスちゃんが、母さんの記憶を消して、千夏をこっちに呼び寄せることができる・・・

ただし、千夏はもう向こうの世界に帰れないって。散々悩んだけどあいつを一人になんかさせるわけにはいかないから俺はその誘いを受けた。でも、こっちの世界に来てもどこにいるかわからないらしいんだわ。

場所も特定できないし、見つけることもできない。だから俺は決めた。強くなる。誰にも負けないような力を身につけるんだって。千夏を守れるのは俺だけなんだって・・・な。」


「そんなことがあったんだな・・・俺も協力するよ。千夏ちゃん探し。弱いけど・・・さ。がんばるよ。」


「あぁ、ありがとう。助かるぜ。っと、すまねえな。重い話しちまって。こんなことしてたからだいぶ日が傾きだしている。この樹海、なにがあるかわからねえけど、とりあえずは今日はここで野宿かな。」


「えぇ!?野宿なの!?お兄ちゃん!」


「うーん、仕方ないだろう・・・町とか村があればいいんだけどな・・・」


「まぁそこらへんは任せろよ。俺のサブ職は錬成師だ。幸い、ここら辺の木は使えそうだ。」


木に手を置き目を閉じ、錬成を始める。


みるみるうちに木が変形していき小屋のような形になった。


「まぁ、一晩はこれでなんとかしてくれよ。さ、中はいろうぜ。」


中にはいったらそこにあったのは木でできたものばっかりだが、


机に椅子、ハンモックのようなものだったり一晩だけなら困らないようなものがそろっていた。


「はえぇ・・・こんなことできるのか。錬成師って・・・サブ職って便利だな・・・

さらは料理人だろ?たしか、タブレットでサブ職って決められるんだよな・・・。」


タブレットを開き、サブ職を眺める。


「お・・・鍛冶師か・・・。いいな。これにしよう。俺はサブ職に鍛冶師を選ぶ。」


実感はないけど、おそらくはスキルが身についた・・・と思う。


できるといいんだけどな・・・と外にあった石に手を置き念じる。


ほどいい形の石が削りだされ、望んだ形に変形していく。


「お、できた。意外と簡単だな・・・まぁ石だからか?」


ひろの手には石でできた包丁がのっていた。


「すげえじゃねえか。鍛冶師そんなことできるんだな。これでじゃあ狩りの道具みたいのつくれりゃ今晩の飯くらいはなんとかなりそうだな。なんていったって料理人のスキルをもったさらちゃんがいるんだから料理なら任せられるしな。」


「は、はい!おいしいものつくりますね!」


「んじゃ、さら、ちょっとまっててくれるか?一人じゃちょっとアレかもだが・・・俺と千尋は食材探しいってくるよ。」


「それだったらお兄ちゃん、私だってついていったほうがいいと思うよ?お兄ちゃんと千尋さんじゃどれが食べれるかとかわからないでしょ?たぶんなんだけど、料理人スキルの応用でそういうのもわかると思うんだ。」


「そっか、じゃあ一緒にいこう。」


それから3人で樹海をうろついた。途中で川があったので、魚っぽい形をしたなにかと水を確保しておいた。見た感じ綺麗っぽそうだったからおそらくは煮沸すれば飲み水にはなるだろう。魚がいるということはそれほど汚い水ではないはず。


川を後にして、木に実っている果実を採取したり、そこらへんにいる小動物を捕まえたりなどをして小屋にもどった。


千尋の錬成でまな板を作り、さらがいやがったので動物は俺がさばき、そして料理が出来上がった。


「ごめんなさい、調味料がないからおいしいってものはできなかったです・・・。」


テーブルに並んだのは魚の焼いたもの、動物の肉をサイコロ大に切り焼いたもの、リンゴ?のような形をしたものをうさぎのように切ったものだ。


「いやいや、全然、大丈夫だよ。ありがとうな、さら。」


さらの頭をなでてやる。くすぐったそうに目を細めるさら。


「んっ・・・えへへっさ、冷めないうちにどうぞ!」


「調味料なしでも割といけるぞこの魚・・・この肉もうめえ!さっすがさらちゃんだぜ」


「あぁ、うまいな・・・味が付いてないはずなのに・・・これも料理人のスキルなんかな?」


「んー、わからないけど、おいしいようならよかったよ。」


食事を終え、3人で今後の計画を立てるために話を始めた。

「あ、そうだ、なあ、さらと千尋、ステータスみせてくれないか?俺のはこんなもんなんだけどさ・・・

二人はどんくらいのステータスなんだ?」


ん、と出された二つのタブレット。


目を疑った。


浮かれていたのかもしれない。割と強くなった気でいた。そんなことはなかった。


二人のステータスは俺の十倍以上をいっていた。


千尋にいたっては・・・


「おい、なんだよこれ・・・こんなに強いのか二人とも・・・上限がどれくらいか知らないけど、あきらか振り切ってるようなステータスじゃねえかよ。


「あぁ、しょせんそんなん基本値だ。俺は能力を使えばさらに伸びる。マチルダ戦はまぁ、手を抜きすぎ

てたかもな。」


まじか。あれでか。あれで手を抜いていたのか。


「えへへ・・・ごめんねお兄ちゃん。」


さらよりも弱い俺って・・・


はぁ、アニキなのになあ。


「まぁ、修行場にいた兄ちゃんいわく、これからの冒険でもステータスは伸びるし、熟練度、レベルもあがったりするらしいからいいんじゃねえか?上級職もめざせるだろ。」


気を使ってくれたんだろうけどとても心に響いた一言だった。


浮かれてたな・・・本当。


こんなんじゃさらを守れねえよ。


二人が寝静まった後、一人小屋を出る。


樹海の中一人、ひたすらに素振りをする。


もっと強くならなきゃ。もっと・・・もっと!


自主練習を終え、川で汗を流し、小屋に帰ろうかと思い振り向いたとき・・・


「ふにゃああああああああああああああああああ!」


「!?女の子の声!?近いな・・・小屋まで戻るにも多少距離がある・・・様子をみにいこう。」


声がした方向へ駆け出した。


そこにいたのは一人の幼い少女だった。


木の根元におびえるように膝を抱え頭を押さえている少女。


その周りを取り囲むように犬型の魔物が3匹。


「あいつは・・・ケルベロスかなにかか?」


首が二つ。尻尾が二つ。しかし体のつくりが犬のようではない。


まるであれはキメラのようなものだった。


「っくそ、いけるか・・・?ウィークサーチ!」


どうやら光属性のようだ。忍び足でキメラ背後から忍び寄り、


「疾風斬り!」


ドラ○エの技をイメージして編み出した技。誰よりも早く行動し、相手に斬りつける剣技だ。


キメラモドキを真っ二つにした後、距離をとり


「シャウト!」


大きく口を開けて吠える。注意をこちらにひきつけほかの人に攻撃をいかせない技だ。


辺りは月明りである程度見えるとはいえ、キメラモドキの行動は素早い。


目で追うのがやっとで、紙一重で攻撃をかわしてチャンスをうかがう。


「ッ!そこだ!ホーリーブレイク!」


光属性を付与した剣でキメラを斬りつける。


ガキン!胴体の鱗のような場所にあたったからだろうか?肉が剣を通さなかった。


こんな初期配布されるような銅の剣レベルの攻撃力の雑魚武器じゃ歯が立たないか。


「っくそ、さすがに・・・きつい!あの子を連れて・・・!逃げる!アサシンステップ!」


忍のように軽やかなステップを踏みキメラモドキの攻撃をよけ、少女を抱え脱兎のごとく逃げる。


逃げる。


逃げる。


「ふう・・・まいた・・・か?大丈夫かい?君・・・」


「ふに?」


ピコピコ。ピコピコ。左右に揺れる耳


フリフリ。フリフリ。左右に揺れる尻尾


・・・。


・・・。


ケモノ娘キターーーーーーーーーーーーーーーーー


「お、おう・・・」


ケモナーってわけではないけどこれは・・・


かわいすぎる。


犯罪的だ!


「と、とりあえず、小屋に戻るか・・・」


抱きかかえ小屋に戻った。


「おい、二人とも、起きてくれ。おい、さら、千尋。」


「んー?お兄ちゃん・・・?朝?」


「っるせえな・・・寝かせろって・・・の!?」


「こいつを見てくれ。どう思う?」


「おい、ひろ、どこで拾ってきた・・・・すごく・・・かわいいです。」


「ちょ!?お兄ちゃん!?なんなのその子!説明してよ!」


さらにいろいろと罵倒を受けたりしながら少女とあったときのことを二人に話した。


辺りが暗かったからだろうか?まだちゃんとしてみれていなかったのもあるし、眼鏡をしていなかった


千尋が眼鏡をかけ、少女をみる。


「・・・おい、もしかして・・・千夏・・・か?千夏・・・なのか?」


・・・。


「「え?」」

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