第7話 リベンジ
「やっぱりここか・・・」
なんでかわからないけど断片的に浮かんでくる身に覚えのない記憶。
きたことのない場所のはずなのにデジャヴを感じる。
鍾乳洞のような洞窟の中にただ一人。おそらくはアリスさんが気を回してくれてみんなあとからくるんだろう。
記憶が正しければ、俺は最弱だった。なぜか千尋が無双してて・・・とまあ、そんなことはどうでもいい。
今回の修行で見違えるほど強くなったに違いない。フラグかもしれないけど、これならば十分にあいつとも太刀打ちができるのではないか。
そう思ってた。
「オーーーーーーッホッホッホ!無様ねぇん?ボーヤ。何だか知らないけど強くなったとかほざいてた割りには弱すぎるわぁん?」
あまりにも無力だった。ステータス自体、前回の10倍くらいにはなっていたであろう。
しかしそれでもこの力量差。勝てない。勝てない。やっぱり・・・
モン○ンでいうティガ○ックスみたいな・・・雑魚装備で突貫してもあっけなく負け・・・みたいな。
みんながきてもどうせまたダメなんじゃないだろうか・・・そう思った俺はただ立ち尽くすことしかできなかった。
「ッ!あぶない!お兄ちゃん!」
ドンッ
横からだれかが俺を突き飛ばす。
だれが・・・?どれだけ俺は突っ立っていたんだ?こんな強敵目の前で。
顔を上げる。
そこには仲間がいた。千尋、空、憂姫。そして・・・・さら。
「なーにぼさっとしてんだよ。ひろ。ったく、死にそうだったんだぞ?お前。気を引き締めろ。いくぞ・・・!」
「お兄ちゃんしっかりしてよ!お兄ちゃんがいなくなったら私・・・!」
「ひろ君。立ちなさい。来るわよ!」
「ひろ。前衛だが危ないときはまかせろ。ガーディアンである俺が守ってやるぜ。」
あぁ・・・仲間っていいよな。修行の時は一人黙々とやっていたが、こんなときだというのになぜかホッとしてしまう。
みんながいるから・・・さらがいるから・・・まだがんばれる・・・!
「まだ・・・いける・・・!」
「あらん?しぶといわねぇん?タフさだけは認めてあげるわぁん?」
「パワーブースト、ガードブースト、スピードブースト、マジックブーストエンチャント!」
「サンキュー。さら。俺も・・・!HPバースト、パワーバーストエンチャント!」
ソウルブレイカーになってから、ファイターが得意とするHPや攻撃力増強呪文が使えるようになった。
マナは消費せずに使えるのがメリットだ。
しかしクールタイムが長すぎて連発できないのがデメリットである。
「ウィークサーチ!」
弱点属性を探ることのできる特技。これもまたソウルブレイカーになったことにより使えるようになった
ものである。敵一体に一度きりの仕様が可能な特技だ。
「千尋!こいつの弱点は光属性、土属性だ!雷属性はダメだ!」
「光属性だあ?んなもんねえよ・・・幻魔召喚。土帝ガイア!岩鉄砕!」
「光なら私に任せてください!大地よ空よ私に力を・・・!ジェネシスレイ!」
ガイアが両腕を振りかぶりマチルダを殴りつけた。マチルダはその巨大なガイアの鉄拳をよけることができず壁までぶっとばされた。からのさらのジェネシスレイの追撃である。
大地、空からマナを集め上空から降り注ぐ光の柱。光というか聖属性に近い気もするが・・・?
「フラグかもしんねーが、やったか!?手ごたえはわりとあったぞ?」
「俺らなんもしてねーな・・・なあ?ひろ。」
「うぐ・・・甘くみすぎていたようねん・・・ここまで私がボロボロになるとは思ってなかったわぁん・・・。・・・!私です。・・・はい。わかりました。すぐ戻ります。
ふふふ・・・どうやらお呼び出しがあったみたいだわぁん手ぶらで帰るわけにはいかないし・・・こいつをくれてやるわあああああああああああああん!」
漆黒の槍がまっすぐに空めがけて飛んでいく
「おい、お前しゃべり方どうなってんだよ。・・・って空!あぶねえ!」
「え?」
「空っ!」
ドンッ
「うっかはっ・・・はぁ・・・はぁ・・・よか・・・った・・・空が・・・無事・・・で」
「憂姫!?憂姫!!おい、起きてくれ!憂姫!てんめえええええええええええええええええええええゆるさねえぞマチルダあああああああああああああああああああああああああ」
「うふふっ気に入ってもらえてうれしいわぁん?じゃあねっまた続きは今度。んーちゅっ」
投げキスを飛ばして一瞬にしてマチルダは消えてしまった。
テレポート的ななにかだろう。
「ッ!さらっ回復を!」
「ハイヒール!ハイヒール!ハイヒール!・・・だめ・・・お兄ちゃん。回復が間に合わない。」
「おい、おい、おい!憂姫!憂姫!おいってば!憂姫!なあ、返事してくれよ憂姫!」
「死者を復活させる呪文なんか使えたりとかしねえのか?さらちゃん。」
「ごめんなさい・・・いくらRPGの世界でも死者をよみがえらせる呪文は禁忌なんです・・・
存在はするらしいのですが・・・ごめんなさい私は使えないです・・・」
「なぁ、千尋、ひろ。悪い、先に出口に行ってくれ。俺は・・・憂姫とここにいる。お前たちと旅はいけそうにない・・・
憂姫のそばにいてやりたい。気持ちに整理が付いたらきっと追いかけるからさ・・・・今は一人にしてくれないか。」
「ッでも!空!」
「行けっていってんだろ!もうこれ以上俺を怒らせないでくれ・・・俺を・・・一人にしてくれ・・・」
「おい、いくぞ。ひろ。仕方がないことさ。いこうぜ・・・こいつを置いて。」
「おい、ちょっと待てよ千尋。仕方がないってどういうことだ?おい」
「あぁ?そのまんまの意味だろうが。お前が弱かった。お前が憂姫を守るんじゃなかったのか?結果守られただけじゃねえかよ。お前が弱かったばっかりにいいんちょは死んだ。違うか?違わねえよな?俺は力をつけた。必死に。必死に。それでお前らはどうだ?ひろも、いいんちょも空も雑魚じゃねえかてんで話にならん。」
「あ・・・あの、なにもそこまで言わなくても・・・」
「さらちゃん。」
シュン
おい、てめえ俺のさらを・・・いや、そんなことよりこれをなんとかしなきゃかな・・・
「やめろって千尋。俺、もっとがんばるからさ。強くなる。もっと。もっと。」
「てんめえええええええええええええええええ!俺はバカにしてもいい!でも、でも、でも!憂姫をバカ
にすることだけはぜってえゆるせねえええええええええええええ!」
剣を手に取り千尋に襲いかかる。しかし風壁に攻撃を防がれてしまう。
「っはんっしょせんその程度なんだよ。俺の風壁も敗れねえ雑魚のくせに人を守るだあ?寝言は寝て言えよ」
「っくそ、くそ、くそ、くそ!ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「さあ、ひろ、いこうぜ?残りてえって言ってんだ。好きにさせてやろうぜ。」
「う・・・うん。なあ、空、きっと、また・・・会えるよな・・・?」
返事はなかった。空が泣く姿なんて初めてみたかもしれない。あの完璧超人な空が・・・
でも信じてる。きっと立ち直ってまた・・・
それからどれくらい歩いただろう?光が見えた。外に違いない。ようやく外に出られる。
「お兄ちゃん!」
「あぁ!いこうぜ!千尋、さら!」
駆け足で俺たちはその光に向かって進んだ。
「っぷはーーー!出口だぜーーーいやあ、まぶしいぜえええ」
やっとの思いで洞窟を出たと思ったらその先は森だった。深い、深い、森。
「しっかし、森か・・・どのくらい広いんだ?これは・・・ちょっとみてみるか。サモン。イーグル」
鷹?のような鳥を召喚して上空に飛ばさせる。どうやらその鳥にこの森がとこまで続いてるか見てもらうようだ。
「あん?ほう・・・だめだ。広すぎる。森しか広がってないらしい。」
「そっか・・・せっかく外に出られたからちょっと期待してたんだけどな・・・そううまくはいかないか。
まあ、歩いてればもしかしたらだれかに会うかもしれないし、町は無理でも村とかならあるかもしれない。とりあえず歩いてみようぜ。」
暗い洞窟の中に空は一人うずくまって泣いていた。
みんなのリーダー的存在の彼。
そんないつも大きな背中が今はすごく小さく見えた。
「俺が・・・弱かったから・・・憂姫を・・・守れなかった・・・俺が・・・弱かったから・・・」
ーーー力がほしいか?少年ーーーー
声がする。
ーーーその女をよみがえらせたくはないか?少年ーーーー
「あたりまえだろ・・・よみがえらせたいに決まってる。憂姫が生き返るなら俺はなんだってする・・・
なんだって・・・」
ーーーそなたに力を与えよう。彼らを殺す勇気はあるか?彼らを殺すことができれば、女を復活させることができるだろうーーー
「なんだってするっていっただろう。力をくれ・・・あいつらに・・・マチルダに復讐できるような力を・・・!」
にたり
声はきっと笑ったのだろう。そんな感じがした。
今はだれだっていいい。憂姫を救うことさえできればなんだって・・・
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