第22話 騙される?

 それから夢遊病者の様な二日間があっという間に過ぎて(朝になったらやっぱり泣き痕がしっかりと)


 金曜の夜。

『りりりりりーん』電話が鳴る。


「はい、あきぶです」

「こんばんは、あおきです、ちょっとお願いが有るのですが」

(あれ今週はだめじゃなかた?)


「な、なんでしょうか」恐る恐る聞いてみる。


「もし明日都合が良ければ服の試着をやって頂けないかと、バイト先のお店なんですけど」

「えっとー、試着ってお店の服を着てみるって事ですか」

「はい、正確には試作の服なんですが、明日来るはずだったモデルさんが急に来れなくなりまして、あいにく170センチくらいの細めの子の代わりが居なくて、急遽アルバイトでもいいから探しているんです」

(確かに身長は170センチプラス1-2センチですけど)


「えーとそれは服を着てみるだけで良いって事ですか」

「何枚か写真を撮させて頂きます、会議の資料に使うためです」

「あのう、私肌が真っ白だし、部屋の中でもサングラスが必要だし、モデルは無理じゃないかと思いますが」


 まだ会社に居るみたいだ、後ろで電話をしている様な声が聞こえる。


「あの嫌じゃなかったら、女性のスタッフが化粧をします、サングラスは濃い色のコンタクトで代用できるのではないかと考えています、体型的にピッタリなのでぜひお願いしたいのですが」

「えっ、お化粧ですか、えーっと、、、」

「お化粧が何か?」

「あの私お化粧ってした事が無くて、何て言うか自分がお化粧をするって想像付かなくて、、、」

「、、、、、、」

 何故だか無言。 


「えっ、化粧をしたことが無いってちょっと驚きです、今時小学生でも化粧してるからそれはちょっと、って気もしますが化粧をした事が無いって人初めてだと思います、お年頃の人で」

「そんな事になっているんですか、武道ばかりやっているのでオシャレとか無縁なもので、と言いますかダメなんです、自分で選んだ服を着るととんでもない事になって、とても外に出るって事が出来なくなります、オシャレ音痴とでも言うのでしょうか」

「なるほど、今までオシャレには興味が無かったと」

「無くはないけどダメなんです」

「とにかく一度ぜひ体験してみてください、メイクと服装のプロが揃っていますので、全てお任せください」

(いいのかな)


「えっで、でもほんとに私で大丈夫なんですか、体型も体操男子みたいな体型ですけど」

「その点は心配しないで下さい、プロのモデルさんは、あっすいませんプロとか関係なく全く問題は有りませんから」

 (引き受けるとは言ってないけどなんだか急に活き活きしてきた青鬼さん、期待に応えるべきだな、それにサングラスの代わりになるコンタクトが有るなんて試してみなくてわ)


「そうですか、わたしで良ければお手伝いさせてもらいます、それでお店の方へ行けば良いですか」

「あっ、迎えにいきます、十時ごろで良いでしょうか」

「あの、明日は青空市駅の近くに用事が有ってそれを済ませてから行きたいのですが」

「そうですか、うちの店はデパートの裏の通りに有るのですが、お分かりになりますか」

「あ、はい、洋服屋さんが何軒か並んでいるところですか」

「そうです、イタリアンモードと大きな看板が出ていますのですぐ分かると思います、何か有ったら僕のケータイに掛けて貰えばすぐに対応しますから」


 と言う事で明日アオキさんの勤める(バイトだけど)洋服のお店に行く事になった。

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