第12話 ママ、お腹空いたー。

 いつもなら遅くても五時には起きる、朝食を作らねばならないから。

 

 今朝は朝食はともかく少しでもエネルギーを消費しておかないと(地面に向かって正拳突きをすればこの一帯に地震を起こせそう-うそです)、とんでもなくハイテンションに成っている。


 青鬼あおきさんの事で。


 でも起きたのは六時を過ぎていた。

(ヤバ)

 怪我の事はすっかり忘れていた、ともかく食事の支度だ。

 

 私はとても燃費が悪い(大食らい)、朝食を摂っていても十時には空腹だ、おまけに動けなくなる、実際じゃなく『もう一歩も動けないよー』の気分なんだけど、でもその後体育などで体を動かしていたら、足がもつれて倒れた事や、気が付いたら保健室で寝かされていた事もあった。


 だから当然朝食は欠かせない、最低ご飯は二杯、山盛りで、あとお肉かお魚と山盛りの生野菜にお味噌汁。


 食費もバカにならない、食費分として五、六万当てているが米だけで一万円飛んでいく、二人分なのに。

(米も家で作りたい)


 なので今は庭の片隅を畑して野菜-主に玉ねぎ、レタス、ジャガイモを作っている、切り取ったニンジンや大根のヘタをそのまま埋めておくと、元の大きさにまで復活している時も有る、助かる。ガンバレ野菜君!

 だけどキュウリは一度にどっさり取れても食べきれない、順番に育って欲しい。


 課題はよく使うキャベツ、中々うまく育たない、やっと中くらいの玉になったと思ったら虫だらけとかカラスがに突かれ未だにまともなキャベツが作れない、虫除けのための温室が必要なのかな。



 昨日は買い物ができなかった、でも冷凍庫にはお肉を凍らせたのが有る、よし朝からお肉。


 といつもより沢山食べて来たがやはり十時にはお腹が空いた。

 二時間目が終わって保健室に駆け込む。


 ベッドに誰も居ないのを確認して「ママ、お腹空いたー」

「はいはい、お饅頭が有るわ、隠れて食べなさい」

「やったー、ママ大好き」


 出してもらったお饅頭にかぶりつく。


あん野良犬みたいに竹輪一口で知らない人に付いていっちゃだめよ」

「どうして」

「迷惑でしょ、付いてこられて、丼に何杯もお替りされたら」

 話しながら急須にお茶の準備をしてくれる。


「知らない人にそこまでしないよ、甘いものは要求するけど」

「見返りに変な事求められたらどうするの、その饅頭は一個十万するんだとかって」

「食べる前にちゃんと断<ことわ>っておくよ、何のお礼も出来ませんて」

「そういう事じゃなくて、ホイホイ知らない人に付いて行ってはいけないって事」


 お茶を急須ごと出してくれる、もちろん私専用の湯飲みも。

 お箸やお皿も私専用に用意されていたりする。


「それくらい分かってるって、この辺りじゃ知ってる人ばかり、飢え死にしそうになっても誰かが助けてくれるよ、それにねいつでも助けてあげたいって人が、、、い、いや、夢だよ、今日変な夢見ちゃって」


 むせそうになってお茶を飲む。


「夢の中に王子様が現れたの、毒リンゴじゃなくてリンゴ十個食べて苦しんでる所を助けられた?」

「リンゴ十個くらいで苦しくなるお腹じゃないって、食べなくて行き倒れなら十分あり得るけど」

「ほんとに食べ物に弱いんだから、だから竹輪の欠片かけらで付いて行っちゃダメって言うのよ」


 こうやってしゃべっているのは保健室に居る二番目のママ。(いやこっちが一番で、うちに居るのは単なる居候いそうろうと言う気がしてきた今日この頃)

 

 この人は小学校入学の時お父さん誘拐事件で私一人家に残った時にうちに来てくれた元音楽教室の先生。

 

 元々保健師の資格を持っていたので養護教諭(保健室の先生)の資格も取ることができたらしい。


 ほんとは音楽教師の空きを待っていたが、私が小学へ上がると言う事で、保健室の先生の方を引き受けたと言っていた。

(心配掛けてたわけだ)


 ママ様々、こうやってお昼前におやつを頂けます。





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