第4話 素敵な夏休み

「う、うそです」


 手のひらを左右に振ってから、みぎての甲を見せる。


「この色は私の皮膚の色なんですよ、全身がこんな色、真っ白なマネキンみたい、小さい時にだんだんと色が抜けて行って皮膚も髪も目の網膜まで色を無くしました、黒目じゃないの気が付きました?」


 おじいちゃんが「こちらへ」という感じで玄関の方を手で指す。

あおきさんは歩きだし。


「あっと、瞬間だったので気のせいかと思いましが、赤く光ってきれいだなって、あっいや見間違いかな、目が赤いなんて兎じゃあるまいし」

「暗くなってサングラスを外した時に、時々びっくりされた事が有りましたよ、うわっ、とか黙って逃げて行くとか、赤かったかどうかは分かりませんが」

「お前の目が赤く見えるのは、本当の事だ、白色しろいろ兎の眼が赤く見えるのと同じ理屈だ」


 うちの家は洋館だけど玄関のところでスリッパから靴に履き替える、私は靴下のまま。


「アルビノっていうのでしたか」

「うん、でも良く似てるけど違うんだって、アルビノは先天性で生まれた時からそうなるらしくて、でも私は生まれた時は色が有って普通の子より少し色白だったけど、それが三歳の頃にだんだん色が薄くなって行ったんです、幼稚園の半ば頃には大体こんな感じななってたかな」

「そう、、ですか、御病気ですか」

「それが原因不明なの、生まれた後からアルビノになることは無いそうだけど、簡単に言えば体に色素を保てなくなった、ただ原因が不明のままで、これはこれで良いかって感じ」


 うちの敷地はやたら広い、青空武道館が東の端にあり真ん中に診療所兼おじいちゃんの住まいが有り、西に子供たちに大人気の化け物屋敷(勝手に入り込んでくる)の様な私とお母さんの住む古ーいびれた洋館がある、二人で住むには無駄に広い、で住むには。



 部屋の窓に不気味な人影を見たとか、ドラキュラを見たとか、悲鳴を聞いたとか、池で幽霊を見たとか、庭の木から真っ白な化け物が飛び出してきて追いかけられたとか、バケモノの噂には事欠かない、学校の七不思議より実体験した数は断然多いらしい。

 特に夏になると忍び込まれ、肝試しに使われる、何故か青空市の恐怖スポット-魔物に襲われた廃墟-みたいな感じでブログなどに紹介されている。


 初めのうちは削除してくださいとかやっていたけど、だんだん面倒になり今ではほったらかしだ、ただ家の方の門には「危険な野生動物を目撃しました、注意!撃退用の高圧電流! 庭に入らないこと 御用の方は東門(武道館側)からお入り下さい」と手書きの看板を付けてみると意外と入る人が減った。

 反対側に照明付き看板「ハイテク警備システム稼働中、御用の方は必ずインターホンをご使用ください」こっちが効いたのかも知れないが。


 診療所に入りブラウスを脱いでベッドに横になるように言われる。

 診察室と言っても待合室とは衝立ついたてで仕切られているだけだ、あおきさんは待合の方で待っててもらってる。


「休みの日でもさらしを着けとるのか、痛むところは有るのか」

「痛くはないけど左のわき腹を回復中、打ち身ってどうやって回復させるの」

「わしらの場合は筋肉の組織を急速に新しい組織と入れ替えておる」


そう言いつつ私の左わき腹を親指でグイグイと押してくる。


「いっつ、そこ、痛い痛い」

「骨が膨らんでおるの、骨折治療中じゃろ、一応レントゲン撮っておくぞ」

「えー折れてたの、直ぐに治る?さらしのままでいいの」

「いや、晒はだめじゃ横にしまが映る、無地のシャツなら縞が映らんから大丈夫なんじゃ」

「はいはい、分かりました、ちょっと待って」


 ベッドの上でさらしをほどく。


「レントゲン室で取らんか」

「別にいいじゃない、水泳か体操男子と変わらないから」

「そろそろ膨らんでくる頃じゃろ」

「全然、あっさんに聞かれちゃった、体操男子ですので」

「これ、余計な事を言うな、さっさと入りなさい」





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