第3話 特別な夏休み
目が覚めた。
朝?夜?何処?仰向けに寝転がっている、目は何かに覆われいて薄明るい光が見えるだけ。
「誰かいる?」そっと声を出してみる。
少し離れた所から見知らぬ声が聞こえてきた。
「すいません、先ほどあなたを
私は慌てて顔に被さっているものを取り目を
「あの、今部屋の明るさは?明かりが点いていますか」
「明かりは点いていません、日が沈み始めて部屋の中が少し暗くなったところです」
「そうですか」
薄く目を開けてみるがやはりまだまだ目を開けられない。
「すいません、さっきまで持っていたバックがその辺に有りませんか」
「バックですか、あのトートバックですか」
「はい、取って貰えますか」
「はいどうぞ」
膝を伸ばして座っている私の脚に少し重みを感じ、バックを受け取る。
メガネケースを取ろうとしたが中がグチャグチャになっていつもの場所に無く、手探りで探した。
「あの良ければ探しましょうか」
「あ、メガネケースなんですが、おかしいなあ」
「中を見てもいいですか」
「あ、どうぞ」
トートバッグを渡す。
少しがさごそして「これですか」
眼鏡ケースを渡してくれた。
「ありがとう」
眼鏡ケースからサングラスを取り出して掛ける。
「この明るさでもまぶしくて、えっとゴーグルは、、、」
「ゴーグルならここにあります、壊れてなければよいのですが、大丈夫そうですね」
「あの部屋の入口近くに明かりのスイッチが有るんですけど、、」
「ああ、明かりを付けます」
真っ黒のサングラスを掛けてやっと目が痛くない明るさ。
「立てますか?」
「大丈夫です」と言って立ち上がるが、ふらっとしてテーブルに手を着く。
「だめですね、もう少し休まないと頭がはっきりしてくれません、やっと目を開けられたんですけど、部屋の中でもサングラスが必要なんです、だからゴーグルが無ければ外へ出られないんです、、、さっきは、それが外れて光が目に入ったから頭がパンクしちゃったんです」
「すいません、それも僕のせいです、肩がゴーグルに当たって外れたんだと思います」
「そうだ、横断歩道であんな運転はいけないんじゃないですか、あれじゃあ横断歩道の意味が有りません」きつい口調で言う。
「はい、その通りなんです、ちょっと考え事をしていて横断歩道に気が付かなかったんです、ほんとに申し訳ありません」
「まあ反省してるなら、大した怪我もしてないですから」
「あの医者の先生が子供たちを送って行かれて、あなたが気が付いてから検査をすると言われていました」
「ああおじいちゃんにバレてたのか、あちゃー叱られちゃう」
「でも悪いのは僕の方ですから」
「バイクや車ぐらい避けろって言われるに決まってます、あの子たちが居なければ避けられたんだけど、あっ帰って来ました、噂をすれば」
私は耳が良い、人には言わないけれど教室のヒソヒソ話はほとんど聞こえている。
いまも猫なら気付くかも知れない程の足音がこの家の方に近づいてきた。
「帰られたんですか、でも、、」
少し間が開いて玄関のドアが開いて人がこっちに歩いてくる。
おじいちゃんが中へ入ってきて、
「おお気ががついとったか、診療所へ来なさいケガをしとるかも知れん」
「何ともないよ、ゴーグルが外れて気絶したの、バイクには勝ったけど太陽には勝てなかった」
「とにかくバイクに当たっとるんだ、それに何処もけがをしておりませんと証明しなければ、後からけがをしたのが分かったらこの人は当て逃げって事になってしまうじゃろ」
「あっそうなの、それじゃあ見て貰わないと仕方ないか、あの子たちは擦り傷だけでしょ」
「ああ、お前さんに突き飛ばされたせいじゃと言っとった、立てんのか?」
「立てない事はないけど」
あおきさんが手を出してくれたので引き上げてもらう。
「うっ、、、」
一瞬背中に痛みが走った、途端に頭がボーとする、立っていられる程度だけの感覚を残して脳が勝手に神経を遮断し感覚をマヒさせてしまう。
気が付いたらあおきさんに抱っこされていた。
「あ、すいません思考力が無くなってしまって」
「おまえの体は便利なようで、不便だのう、そんな風じゃ大ケガでもしてみろ、眠ったまま永遠に目が覚めんぞ」
「眠っている様だけど、体の全機能を回復のために使っているのよ、ただ火事だと逃げられないね」
体を少し動かすと、
「診療所まで運ばせてください、倒れたら怪我がひどくなりますから」
だまってうなずく。
「それだけではないぞ、あおきさんだから良かったものの、悪い奴だったら何処かに連れ去られておったかも知れん、脳が勝手に判断しよるのかも知れんが、動ける程度には意識を保つようにしなければ、命が幾つ有っても足りんぞ」
「そう、、か、で、でもこういう事ってめったに起きないからゴーグルがそとで外れたなんて初めてだもの」
「どうしてそんなに光がダメなんですか」
「どうしてって、ドラキュラだから、、、」
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