第2話 夏休みは苦手-運命の出会い
「もうせっかくプールで汗を流してきたのに汗だくよ、あんた達こんなに暑い時でもよく手なんて繋いでいられるわね、杏、なおみとくっ付き過ぎ、なおみは私の彼なんだからね、セクハラは許さないわよ」
赤鬼と呼ばれる私に文句を垂れてるのは同級生のミニこと
昔話になるが私も小さい頃はミニと肩を並べて小さかった、二人そろってミニミニと呼ばれていたが、今では私は学校一の背高のっぽ。
一年前に引っ越してきた
呼ぶのはこうやって三人で居る時だけ、私は学校では鬼の学級委員長、通称は「おに」か「委員長」
「だってこの子手を離すと何処へ行くか分からないのよ、それにさあ家に帰ると口うるさい
「こらセクハラ
この小さな体で私より迫力のあるドスの効いた声で返してくる。
「あのね、一飲みなんか勿体無いことやりません、やっぱりお肉はガジガジ噛んで味わなくっちゃ、あー血の滴るような生のお肉一度でいいから食べてみたい」
「ほら正体を現した、ハゲタカのバケモノ-バルジーナ、私はこの子を守らなければならないの、クラスメイトと言えど赤鬼を退治しなければならないんだから」
彩光はなおみを自分の後ろに隠す。
「ハゲタカじゃ有りません、赤鬼の舞って良い鬼さんで有名なのよ間違ってもなおみは食べないよ、ずーとずーと可愛がってあげる、ミニは骨と皮だけで、不味そうだから食べたくないわ。今から家に来なさい、カロリーたっぷりのぶくぶく太りそうな餌をたっぷり食べさせてあげる」
私はなおみを引っ張り出して手を取る。
「ブロイラーじゃないんだからね、そうね暑いから冷麺なら食べてあげてもいいわよ、具をたっぷりね、キュウリは採れたてね、その後でプリンとケーキ、飲み物は100パーセントマスカットのシェイクでいいから」
「だー、なにその
「フグ提灯、、確かに骨と皮だけね、どうせならハリセンボンだっけ、トゲトゲだらけのにしといて、私っていつも走り回っているから肉が付く暇ないのよ、子守も大変なんだから」
彩光がなおみを取り戻す。
「じゃあなおみは私に任せて、ママと一緒の部屋で暮らしましょうね」
「だからなおみ、そんな怖いおばさん、もしかしたら魔法使いのおばあさんについて行っちゃだめよ」
なおみの空いてる方の手を取って、
「まったく、なおみ横断歩道渡るからママから離れちゃだめよ、渡ってもくっ付いているのよ」
「やれやれ、とんだママがくっ付いてたわ」
家の近くの横断歩道、ここを渡れば我が家だが門までは50メートル程の距離がある。
横断歩道の所に着くと反対車線に坂の下から一台の背の高い車が上がってきて、私たちが居るので止まってくれた。
ミニとなおみを先に行かせ車の前をお辞儀をして渡り終えようとした時に、車と歩道の隙間からバイクが走り出てきた、車の陰で全く気が付かなかった。
ズッザーーー!
バイクはブレーキを掛けるが間に合わない、前の二人を突き飛ばす、私は倒れるように滑り込んできたバイクの前輪は飛び上がり
運転していた人は道路に仰向けに倒れ、その上に私がうつ伏せに抱えられている。
まるで抱き合っているかのように。
「うっ」っと小さな声が聞こえたので起き上がろうとするが、まだ抱えられたままなので起き上がれない。
「大丈夫、手を離して」思わず大きな声がでる。
手を離され即立ち上がり、とりあえずこの人はほっといて後の二人の所へ駆け寄り「ケガは?」
両足を伸ばして座っていたミニは「杏が突き飛ばしてくれたお蔭で
同じように横に座っていたなおみも「ぼくも」と両手を見せる、少しの擦り傷。
(よかったー)と思うと同時に怒りが込み上げてきた。
振り返ると片足をバイクに挟まれズリズリと足を引き抜こうとしていた。
文句を言いたかったが「大丈夫!」不機嫌そうに言いつつバイクを持ち上げようとするがビクともしない。
グキッ、わき腹辺りに一瞬だけ激痛が走った、でもバイクを持つ手は離さない、大して役立ってないだろうけど。
すぐに痛みは消えたけれど代わりに頭がぼーとしてくる。(ああ来てしまった)
私の体は痛みを勝手に切り離してしまう、自分で麻酔をかけてしまう様な感じで頭の働きが低下して感覚を
(気が付かなかったけどわき腹を強く打ったのかな)
なので運転していた人がバイクの隙間から足を抜いたことも、立ち上がった事も目には入っていたが、私の体が動かなかった、と言うか95パーセントほど思考が停止して(あれ私どうしたのって感じ)身動きさえ取れなくなっていた。
「あの、もう足は外れましたから」(えっ足が外れた?って、えー足が体から外れたらどうなっちゃうの)とんでもない勘違いをする私。
彼が私の手を取って「バイクから手を離してください」
「はい」ほとんど夢遊病者。
彼が私の手を取って体を起こそうとしたはずみに、彼の肩がわたしの装着しているゴーグルに当たりゴーグルが頭の上の方にずれてしまった。
ほんの一瞬彼の驚いた顔が見えたが、すぐに真っ白な光が私の脳を直撃した。
真っ白な世界に引きずり込まれる私、意識を失ったのだ。
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