第35話 ギブライド

 砂塵が、小屋の向こうに立ち込めていた。山を下りてきた魔法使いの女たちも、迎撃に向かった部下たちも砂塵に呑まれている。

 レスダムールか。

 ギブライドは走った。砂塵に突っ込んでいく。

 一人だけ立ち尽くした人影が見えた。ギブライドは剣を腰だめに構えて突進する。

 水音の混じった鈍い音がした。

「やはりか、レスダムール!」

 ギブライドの剣は、レスダムールの胸の中心を貫いていた。

「代官と俺たちをぶつけて、その隙に出し抜くつもりだったか! 貴様の叛意など見えすいていたぞ!」

 風が吹いた。砂煙が晴れていく。

 辺りでは、いくつもの死体が燃えていた。女の魔法使いも部下たちも爆発を食らって死んでいる。全員がその身を黙って焼かれていた。

 微かに息を残したレスダムールが、弱弱しく血反吐を漏らした。

「馬鹿が! 貴様の代わりがいないとでも思ったか! 貴様の残した資料と時間があれば、貴様の代わりなどいくらでも用意できるわ!」

 ギブライドは剣を引き抜き、レスダムールを地面に転がした。

「さあ! 邪魔者は殺した。今回の実験は失敗したが、まだ機会はある。早く残りを皆殺しにして、祖国に帰ろうぞ!」

 味方の生き残りは、自分を含めて七人もいる。

 生き残った敵は、モレットとクライトを含めて三人しかいない。

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