第2話 間章一

「魔法指南役として派遣されて参りました。以後、よろしくお願いいたします」

 彼女は恭しく一礼した。流麗な瞳が私を真っ直ぐ見据えている。一目見ただけで、優秀な人間だと分かった。

「良く来てくれた。師匠は彼の大魔法使い──レスダムールだったか」

「はい。手取り足取り、厳しく教えていただきました。僭越ではありますが、魔法使い育成の任を果たしたいと思います」

 彼女はまだ、二十を少し超えた歳だろう。それなのに過分に気負うところはなく、背筋には芯が通っている。大仕事を任されたことと言い、第一印象通り優秀な人材なのだろう。

「期待しているよ。既に人員は揃えている。全権を任せるから好きなように育ててくれ。何かあれば直接私に言うと良い。直ぐに対応しよう」

 彼女は眼を瞠った。私は何か変なことを言ってしまったか。

「どうした、何か問題でも?」

 俯くように、彼女は眼を逸らした。

「いえ、想像以上の待遇だったものですから」

 言われてみればそうかもしれない。私は小さく笑った。

「仕事を任せる。責任を取る。この二つが私の仕事だよ。最初は上手くいかないだろうが、焦ることなく頑張ってくれ」

「はい。誠心誠意、任務に励みたいと思います」

 そう言って、彼女は控えめに笑った。

 このガシェーバの街は、彼女の存在で大きく変わっていくだろう。私はその予感を、興奮と共にひしひしと感じていた。

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