第2話 間章一
「魔法指南役として派遣されて参りました。以後、よろしくお願いいたします」
彼女は恭しく一礼した。流麗な瞳が私を真っ直ぐ見据えている。一目見ただけで、優秀な人間だと分かった。
「良く来てくれた。師匠は彼の大魔法使い──レスダムールだったか」
「はい。手取り足取り、厳しく教えていただきました。僭越ではありますが、魔法使い育成の任を果たしたいと思います」
彼女はまだ、二十を少し超えた歳だろう。それなのに過分に気負うところはなく、背筋には芯が通っている。大仕事を任されたことと言い、第一印象通り優秀な人材なのだろう。
「期待しているよ。既に人員は揃えている。全権を任せるから好きなように育ててくれ。何かあれば直接私に言うと良い。直ぐに対応しよう」
彼女は眼を瞠った。私は何か変なことを言ってしまったか。
「どうした、何か問題でも?」
俯くように、彼女は眼を逸らした。
「いえ、想像以上の待遇だったものですから」
言われてみればそうかもしれない。私は小さく笑った。
「仕事を任せる。責任を取る。この二つが私の仕事だよ。最初は上手くいかないだろうが、焦ることなく頑張ってくれ」
「はい。誠心誠意、任務に励みたいと思います」
そう言って、彼女は控えめに笑った。
このガシェーバの街は、彼女の存在で大きく変わっていくだろう。私はその予感を、興奮と共にひしひしと感じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます