第7話 ゲームとかちゃんとやりこまないほうだろ?
ここ最近多いな転生者。
俺はいつもの草原で腕組をしながらセルティコを見つめ,、そんなことを考えていた。
はやくこねぇかな。寒いし早く終わらせたいんだけど。
サクッと終わらせて今日はセルティコに行けるだろうか?最近肩がこるからな、マッサージ系の道具を買いにいきたいんだけどな。
城下町じゃなく、セルティコで買うからいいんだよなぁ。あのちょっと発展した田舎感がいいんだ。早く終わったら絶対いこう。そうしよう。
もう日が沈もうとしている。
まだこないのか。すげぇ暇なんですけど。
暇すぎて草原にミステリーサークル作ってるんですけど。
俺の愛刀、宵鏡もこんな扱われ方をするとは思っていなかっただろうなぁ。
しかしこねぇな。まぁバニタスもどれぐらいに来るかわかるときとわからない時があるからな、しょうがない。
それともこれも転生者の作戦のうちか?次の相手は二刀流なのか?
月がのぼり始めた頃、星々の輝きを圧倒する光があたりを照らす。
やっときやがったな、待たせやがって・・・
光はやはり人の形になり、前回同様の20代前半の若者になった。
「・・・」
なんだ、無言とは珍しいな。出てき方といい雰囲気といいターミネーターかお前は。
「なぁ、おい」
後ろ姿に俺が声を掛けたその時だった。
「おらぁ!」
振り向きざまに突然の拳、まさに先制攻撃。
「ご挨拶だな。・・・っておわ!?」
軽く防ごうと右手で相手の拳を掴むが、腕ごと後ろにもっていかれてしまう。
なんだこの力・・・!!上位魔族クラスだぞ!?
掴んだ手を横に流しすぐさま距離を取る。
「なんなんだ一体・・・とりあえずスキャンだな。」
『レベル5421、人間、転生者、危険要因・無』
・・・なるほどこういうこともできるのか・・・
危険要因が無って、あるだろ。こいつ自身が危険要因だろ。
最初からレベルが高すぎる。しかも人間じゃ絶対たどり着けない領域まで来ている。
しかもこの数値を・・・俺は知ってる。
「お前の転生特典は、『魔王と同レベルになること』か。」
「お、すげぇそんなのわかっちゃうの??ちゃんと機能してんだね、天使の転生特典って。全然体で感じないから騙されたのかと思ったよ。早速出てきた雑魚敵に攻撃防がれちゃうしさ。」
俺はチュートリアルだったり雑魚敵だったり、そんな印象を与えやすいのだろうか。少しショックだな。
いや、今はソレどころじゃねぇな・・・魔王と同じレベルなんて明らかに異常だ。
本気でいかないと俺がやられる・・・かも。
「いきなり攻撃しやがって、俺が通行人Bだったらどうすんだよ。」
「かんけぇねぇ。もしそうなったらそいつの運がなかっただけだろ。おーらもっと行くぞ!」
構えやらモーションはすべて素人だ。
ただ一撃一撃が重いのと、
「フン!」
「いってぇ!ザコ敵のくせにやるなぁ!」
防御力が高いのだ。
無防備に拳を振り上げて向かってくるので潜り込んでボディーブローを一撃。
普通の人間なら粉微塵になるほどの威力で殴ったつもりなんだがな・・・いてぇで済むのか。これはまたショックだ・・・
単純にレベルが上っただけでこうなるなんてな。こんなチートもあるんだな。
まさに強くてニューゲーム。
「なんでそんな特典にしたんだお前。」
「簡単だろ。魔王を倒せっていうなら、魔王と同じかソレ以上になればいいんだろ?それなら同レベルのほうが楽しいに決まってるじゃん。そんで殴り合って殺してやるんだよ。」
仮にも婚約者であるあいつを殴り殺すなんて聞いていい気分はしない。さっきから聞いてるとこいつは人間として腐ってるな。
しかしどうしよう。すげぇめんどくさい相手がきた。さらに好戦的となると今までのように勝手に穴に落ちてもらったり言葉を交わして油断させる手が通じない。
『今の』俺の攻撃だと殺すには時間がかかるしな・・・どうしたものか。
このまま打撃で倒すには時間がかかりすぎる。魔法もこのレベルの相手になるとろくに使えないだろうしな。
困った。
いや、あるじゃん。
方法あるわ。そういえば俺にさっきまで刺さってたじゃねぇか!
「さぁて勇者様よぉ。ザコ敵がこの世界の恐ろしさを教えてやるよ。」
「どうした、いきなり粋がっちゃって。魔王と同じ力を持つ俺にお前ごときザコが勝てるわけねぇだろ。さっさと死んじまえよ!」
乱暴に振り回される拳。しかしレベルが高いがゆえ、雑なのに相当速い。
見えるけど体がおいつかねぇな・・・
「動きが鈍いぜ!おらくらえェ!!」
「くっ!」
いってぇ・・・!!骨はイッたなこれ!
腹部への攻撃。豪快に吐血し、視界が揺らぐ。
「へへへ、終わりか・・・。あぁ?お、おい。離せ!離せこら!!」
必死に手を引き抜こうとするが、離さない。ここで逃がせば俺もやばい。
「これで、動けねぇな・・・?」
右手に意識を集中し、魔力を貯める。
徐々に熱を帯び、バチバチと音を立てる・・・
意識が朦朧とする中、確かな力を右手に感じた。
よし、いいな。
「はぁ!!」
全く俺らしくない気合の入った声だな。
「ガホぉ!!」
好き勝手やってくれたお返しに顔面に一撃最大級のを食らわせた。あぁ気持ちいい!!超気持ちいい!
空中で何回転もしながら飛んでいき、地面につくとまだまだ転がっていく。人間ってここまで派手に飛ぶんだな。
こんな力で攻撃したら大抵飛ぶより先に爆散して消えちまうからこれはこれで気持ちが良いものだ。あぁ清々しい。
青年は立ち上がらない。でも何となく分かる。こいつは死んでない。
まぁこうやって動けなくすることが俺にとって意味があることなんだよ。
「こい、宵鏡」
背中の刀は呼びかけに応え、ひとりでに俺の手元に収まる。
かっこいいなぁ宵鏡。ようやく出番だ。
再び俺は手に魔力を貯める。そしてその魔力は宵鏡へと流れていく。
怪しく光る刀がどんどん俺のテンションも上げていく。
「はぁ・・・はぁ・・・!なんで・・・!俺はこの世界で最強のはずなのに・・・!」
血まみれで骨が歪みきった顔をあげると、そばまで来ていた俺と目が合う。
「残念だったな・・・?お前アレだろ。ゲームとかちゃんとやりこまないほうだろ。」
「は、は?何言ってんだ・・・ゴホゴホ!」
「わかってねぇなぁ。魔王倒した後はよ?隠しボス倒しに行くだろうが。案外魔王より強いやつっているんだぜ・・・」
一瞬の集中。
俺は宵鏡を横一閃に薙ぐ。
ヴォンという音とともに、一瞬真っ暗な闇の軌跡ができるが、すぐにその闇は消え、首から上がなくなった青年が力なくその場に伏した。
光ごと断ち切り一瞬完全な闇を作り出す・・・それこそ我が愛刀、宵鏡。
ただこれ疲れるんだよな!魔力をすげぇ消費するんだよ。
よかったぁ、こいつがなければ死ぬまで殴り続けるところだった。
時間がいくらあっても足りねぇよ。まったくめんどくせぇ特典手に入れやがって。
さて、いきますか、ね・・・
「ゴポぉ!」
あぁまずい、流石にアレをまともに食らったのは良くなかったかな。
こんな吐血したのいつぶりかな。前の転生者に真っ二つにされた時以来か。
くそ、具合が悪い・・・視界が揺れまくる・・・
このままじゃ、また魔王に怒られるな・・・
・・・地面つめてぇ・・・・・・・
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