第41話 はふ~……
その後しばらくしてから大橋を離れ、今は海沿いの道を歩いている。
島をぐるっと1周できるこの大通りから、島の反対側にある海水浴場にむかうことにした。
この寒さでは泳ぐことはできないし、水着少女も当然いない。
でも砂浜で感じる海には、また違ったよさがあるものだ。
それにしても歩いているせいか、さっきから体が温かい。
おや?
桜の花びらが舞っている?
さっきまで寒かったはずなのに。
まるで春のようなポカポカ陽気になっている。
「なんか急に温かくなったね」
「この辺は春のエリアだからね~」
「春のエリア?」
「うん、この道は1周する間に4つの季節が楽しめるようになってるんだよ」
「ほえ~」
さすが夢の世界か。
どうやってるのかとかは関係ないんだろうな。
「もう少し進めば夏のエリアに入るよ」
「あ、もしかして砂浜のところ?」
「そうだよ、海水浴もできるよ」
「おお~、いいですね~!」
ということは、あきらめていた水着少女もいるかもしれませんね。
いや、お姉さま方でもいいですよ?
ミュウちゃんの水着姿も見てみたいな~。
でも今持ってないよね。
うん、桜が舞う中でなんてやましいことを考えているんだ。
私ってこんな人間だったかな……。
いや、そうだったかもしれない。
本来の自分を、元気な自分を取り戻していってるのか。
確かに昔の私はこんなんだった気がする。
人見知りする方だったから、行動には移さなかったけど。
今こそ自分の成長のため、大きな1歩を踏み出してみようか。
「よ~し、レッツゴー!」
「え、お姉ちゃんどこ行くの?」
急に走り出した私をミュウちゃんが冷静に止める。
ただローブの裾を引っ張られたのでちょっとだけめくれあがってしまった。
「いやん」
「お姉ちゃん、桜餅食べようよ」
「わあ、ありがとう~」
ミュウちゃんは恥ずかしがる私をスルーして、どこからか桜餅を取り出してきた。
少し歩いたところに桜の木がたくさん並んでいる場所があって、そこの木の下に移動する。
ベンチも用意されていたので、そこに腰を下ろして桜餅をいただく。
……んまい。
なんかさっきからあんこばっかり食べてる気がするけど。
好きだからいいんだけどね。
「お姉ちゃん、緑茶いる?」
「いる~」
ミュウちゃんが水筒からカップにお茶を入れてくれる。
あれ?
その水筒って、さっきお汁粉はいってなかったっけ?
いくつも持ってきてるのだろうか。
準備のいい子だなぁ。
私はカップを受け取り、口をつける。
ほどよくあったかいお茶が、甘ったるくなっていた口の中を流してくれた。
「はふ~……」
しあわせだ~。
そういえばあずき茶というものがあると聞いたことがある。
あんこを食べてあずき茶飲んだらどんな感じなんだろうか。
一度試してみたい。
この世界のどこかに売ってないかな。
見かけたら買っておこう。
ユキちゃんに頼んだら手に入りそうだし。
「さて、そろそろ行きましょうか」
「は~い」
ミュウちゃんは水筒などをカバンに詰め直してぴょんと立ち上がる。
元の道に戻り、再び歩き始めた。
右に海、左には桜並木という贅沢な景色を楽しむ。
むこうの方で桜が途切れてるところがあるから、あそこから夏のエリアなんだろうか。
今のうちにこの桜を目に焼き付けておこう。
いつまでも見ていたいものだけど、この先には水着美少女が待っている。
私は行かねばならないんだ。
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