第42話 夏だ~!
いよいよエリアの境界線。
立ち止まり、ミュウちゃんの手を握る。
よ~し、いくぞ~!
「夏だ~!」
「夏だ~!」
「ってあっつい~!!」
「焼ける~!」
おそらく偶然なんだろうけど、エリアに踏み込んだ瞬間に熱風が吹き付けてきたのだ。
まったく、焼き肉になるかと思いましたよ。
「避難~」
「おお?」
ミュウちゃんが私のローブの内側に潜り込んできた。
やだ、萌えてしまうじゃないの。
「ねえミュウちゃん、逆に暑くない?」
「結構マシだよ~」
ふ~ん、そんなもんかね?
「えっと、一度街に戻る?」
この道は島をぐるっと回っているだけなので、横にそれれば街中にすぐ戻れる。
四季のエリアはこの道沿いに展開されているので、街の方は平均的な気候だ。
それに街の大通りから直接海水浴場へも行けると思う。
見た感じ、この道の方が景色は抜群にいいけど。
でも街の中だって十分観光地として素敵な場所だしね。
「うう、今戻ったら負けた気がする」
「おお……」
いったい何と戦ってるんだ……。
でもその根性と気持ちは大事にしたいね。
「よし、それじゃあ頑張りますか」
「うん」
ミュウちゃんをローブの中に入れながら歩きだす。
すごく動きづらいけど、妹のために我慢だ。
最初の熱風はつらかったが、暑さにはだいぶ慣れてきた。
楽園だからね、立ってるだけで倒れるような気温にはしないでしょう。
それよりもこの夏の雰囲気がとてもいい。
夏で海にいると、学生の頃の夏休みを思い出すね。
あんな長期の休みは大人になったら手に入らない。
唯一、年末年始に1週間ほど休みはあったけど。
夏休みなんてお盆の3連休くらいか。
もっとひどい会社なら年末年始も働くようだ。
私のいたところは休みに関してはまだマシだったね。
結局出勤してたけどさ。
でもそれは自分のせいかもしれないな。
別に全員が出勤してたわけではないし。
嫌と言わない自分が悪かったのかも。
断ることが良いとか悪いとかではなく、そういう選択もできたということ。
私は真面目な人でいることを選んだ。
その結果があれだったということ。
……。
つまらないことを考えてしまったな。
せっかくの楽園なんだから楽しまないと。
あ、だんだん海水浴場っぽい砂浜が見えてきた。
「ミュウちゃん、もうすぐで着きそうだよ」
「うにゅ?」
ミュウちゃんが私のローブから顔だけ出して、まわりを確認する。
そしてローブからいきなり飛び出して走り出す。
「海だ~!」
「ええ!? ここから走るの!?」
海ならさっきからずっとあるじゃないの。
こんな炎天下で数百メートルも走ったら倒れちゃうよ。
人とドラゴンの種族の差なのか……。
「待ってよ、ミュウちゃ~ん!」
必死にミュウちゃんを追いかけ、ひさしぶりに肉体の限界に挑戦した。
会社にいたころは、別の限界に挑戦していたけどね!
ああでもこれはやはりきつい。
クラクラしてきた。
「海だ~!」
砂浜に足を踏み入れ、ミュウちゃんが再び叫ぶ。
「アロ~ハ~!」
私も疲れてハイになっていたのか、叫びながら砂浜にジャンプした。
両手を広げ、太陽の光を浴びる。
充電、充電~。
その時ふと隣を見ると、ミュウちゃんがポイポイポイっと衣服を脱いでいた。
「キャ~!」
突然の出来事に、私は目を見開いてガン見する。
まさかこんなところでミュウちゃんの生まれたままの姿を拝めるのか。
そう思っていたら、残念ながら下に水着を着ていらっしゃいました。
いつ着たの、いつから着てたの?
くぅ~……。
そういえばミュウちゃんたちは、生まれた時どっちの姿なんだろう。
やっぱり人の姿かな?
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