第2話
随分と慣れたが押し入れを開けた時その日の体調により魚臭い匂いが漏れてくる
大体の理由は水槽の水が汚れてしまったからだ
魚のような体表粘液と同じ原理なのだろうかわからないが粘着力のあるヌメっとした体液が水槽を汚す
暗がりの水槽の水が魚の匂いと混じって、泡を閉じこめたスライムのように変化している
特に今日は具合が悪いようで生臭い
早くて2日、遅くても5日に1度は水槽の掃除をする日が来てしまった事に溜息を吐いた
「はぁ.....。」
足音を忍ばせて、1階まで降りてから改めて家に誰も居ないことを確認する。
台所、リビング、お風呂。静まって誰もいない
お風呂に水を溜めていくと、水面に波紋が広がりふと我に帰ってしまう
もし誰かに見つかればあの子は標本にでもされてしまうのだろうか。
人魚自体陸では生きられないと言うのに海に帰りたがらないあの子はどうしたいのだろうか
君はどうして喉から出る音を発さないのか
口を開けては何かを言っているのはわかるけど何も聞こえない
彼女の声が聞こえないのは、種族間の問題で言葉が通じ合えないからだと考えていた
そもそも人魚が人間の言葉を話すのかと定義した時点で間違いなのだ
水中で息をする時点で人間と呼べるものでもなく、かと言ってハッキリとした魚でもない
魚と人の半分の境にいる生き物だ
人が魚の言葉を理解できたのならきっとわかったのだろう。
押し入れを開けてソレを見た。
押し入れに住む人魚 ロゼマカヌラ @alcria
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