ラジオ

 23時を回った頃少年は手元の白が広がるノートを見つめていた。明日は9月1日なのだ。うぅん、と一つ唸り腕を組むがそれもすぐに飽き再度ノートに被さるように問題を解き始めた。一問一答じっくりと数字を書いていく。3問程解いたところで時計を見てみたら既に15分経っていた。少年は時計を見たことで集中力が切れ手元のスマホを開いてみた。数件の通知を削除しつつ何の気なしに動画サイトをタップする。フォローしている人が新しい動画を上げたようで少しだけと思いつつ視聴を始める。ふとスマホ上部の時計が30分になったのが目に入る。ハッと気付きスマホを閉じる。そこで再びノートに被さるが既に集中力は完全に無くなっていた。なんだか部屋の掃除でもしたいようなそんな気分になってきた。すんでのところで思いとどまるが、耳が寂しい事に気付いてしまう。慣れた手つきでスマホのアプリからラジオを立ち上げる。

「アハハハハ」

 つけた瞬間、大音量でスタッフの笑い声が入る。

「だよね。今日は絶対聞いてる学生さん多いよ!」

 少年の心はぐいっとラジオに惹き込まれた。

「いやー僕は悪い子だったから、大体後ろの答え写してたんだけどね。あ、ダメだよ今聞いてる学生さんは真似しちゃ。僕みたいな悪い大人になっちゃうから。」

 その手があったかと少年の手は答えとノート行ったり来たりした。

「懐かしいなー宿題とか。僕は最終日まで全く手つけないタイプだったけどね。皆さんはどうだったんだろうね。今聞きながらやってる人は僕と同じですけどね。」

 MCの声をBGM代わりにスラスラと書き写していった。

「この時間までやるって相当偉いけどね。あ、でもちゃんと前もって終わらせてる人はもっと偉いけど。」

 その言葉に時計を確認すると0時まであと5分だった。


「はい、ということで天気予報です。」

 という声に反応してパッと頭を上げる。眼前に広がるのは10問程度の答案と残りの余白と時計の6時だった。

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