ヤママユガ2

 女が目を覚ますといつの間にか移動したのか薄暗い部屋にいた。辺りを見渡すとテレビ、ソファ、積まれた本など生活感が漂ってくるようだ。それでも女にはやはり見覚えがない。更に状況を見ようと体を動かすと違和感がある。手が動かせないのだ。反射的に下を見ると両手が後ろに腕を組むような形でガムテープで固定されていた。それも頑張れば取れるような甘い固定ではなく、ガムテープ一個消費したのではないかと言うほどぐるぐるなのである。足元に転がるガムテープの台紙がそれを物語っていた。なぜ、誰がと考える。しかし記憶に残っているのは好意を告げたばかりの同僚の男だけだ。女はかろうじて動く足を利用し、背面にズズズと移動する。トッと何かにぶつかる。見上げると、男が立っていた。いつもの優しい笑顔で微笑んでいた。

「あ、これ、どうなってるんですかね。はは。」

 男は微笑むだけで何も言わない。

「えと、このガムテープ外してもらえると助かるんですけど」

 言い終える前に男が話し出す。

「あのさあ、俺ここのとこ羽振り良かったと思わない。」

「…はあ。」

「なんでだと思う。あ、でも君とは喋ったこと無いくらいだし知らないかなあ。あはは。」

 ズイと男がしゃがみ込む。女は照れか恐怖かわからないまま顔を逸らす。

「や…めてくださ」

「何を。」

 男のさじ加減でキスさえできそうな距離での会話に女は俯く。

「…簡単に言うと、君の卵が欲しいんだよね。」

「無理です。」

「お、即答。どうして。」

「私、生理というものが来たこと無いんです。」

「ふうん。俺はその答えを知ってる。知りたいかい。」

 女はチラと男の目を見て頷く。

「ふ。分かった、じゃあちょっと失礼」

 言うと同時に女の肩をトッと押し、股を開く。一瞬の出来事に女は呆然とした。その間にもスカートを邪魔と言わんばかりに除け、パンツを膝程度まで下ろす。

「これが精包ってやつ。いわゆる精子ね。」

 見たこともない薄濁った球体を目の前に出し、直後女の股付近に近付ける。

「よく見て。これが、君の生態だよ。」

 男は少し興奮したように鼻息を荒くした。女は絶え間ない意味不明に声が出なかった。突如女は股に違和感を感じた。ジッと見つめれば見たこともないものがその球体を受け入れようとしていた。

「君の生殖器はこれなんだよ。」

「どうしてこんな…」

「言ったろう、が欲しいって。」

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