第3話 無音、響音。

隔離室は無音だった。暴れ回る患者も鎮静剤を入れられればそれまでだ。テレビの音が怖かった。人の声が怖かった。

だけど何も無いのがいちばん怖くて

話をしに来る主治医に

早く向こう(隔離ではない閉鎖)に出してください

と何度もお願いした。


無音だからこそ、小さな音が響いた。

私は受験生だったから勉強していた。

ノートに鉛筆が擦れる音

机と鉛筆がノート越しに当たった音

字を消して揺れる机の音

全てが、無音の隔離病棟に響いた。


入院から1週間と少したった日

OT(作業療法)が始まった

一番はじめはペン習字を選んだ。

久々に、何かを楽しいと思えた。


OTが終わり帰ってきて、

隔離ではない閉鎖へ移動することになった。

周りはお婆ちゃんばかりの、四人部屋だった。

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