シキミのための魔術エチュード《魔術と法律》

槙理「渡衛槙理よ」


樒「樒です。幕間の公開授業、皆さんも私と一緒に魔術の世界を学んでいきましょう!」


槙理「今回は魔術を扱ううえで理解していないといけないルール。要するに法律に関係する事をかいつまんで話していくわ」


槙理「まず手始め。この日本国内で魔術士になろうと思ったら、魔導術法で定められている通り“魔術取扱者試験”に合格しなければならないってのは知ってるわね?」


樒「確かそれに合格すれば魔術取扱者免許が交付されるんだよね」


槙理「そう。魔術取扱者免許を持つことでその人は魔術士として国に登録されて、単独での魔術の使用が許可されるのよ」


樒「試験に合格すれば魔術も使い放題かぁ……」


槙理「そう簡単にはいかないわよ。魔術取扱者免許単体で使用可能な魔術は、周囲に危害を加える可能性が少ない、リスト第3種の魔術だけ」


槙理「代表的なのが自動車とか発電機とかの魔導機の始動魔術あたりね」


槙理「退魔士認可を取得すると対霊攻撃魔術とかが含まれてるリスト第2種A型の魔術が使用可能になる」


槙理「……といった感じで取得した資格によって使用可能な魔術の制限が解除されていくの」


樒「やっぱりそう簡単には使えないよね」


槙理「当然でしょ。魔術一つで人にけがを負わせるどころか、家一軒吹っ飛ばしかねないんだから。銃とか自動車と同じ、力にはそれ相応の責任が伴うってものよ」


槙理「魔導術法の中で魔術士が負う責任を一番よく表しているのが通称『3大義務』ね。本当はこれだけで一つのトピックが作れるくらいだけど、今回は簡潔にいくわ」


槙理「1つ。魔術士は魔術の術式や詠唱文、魔導機など、自身が保有する魔術に関する道具・情報のすべてを行政機関に登録しなければならない。『登録義務』」


槙理「2つ。魔術士は例外となる地域や施設を除いて、いかなる場所においても行使した魔術について種類・規模・日時・地点の詳細を警察組織に報告しなければならない。『報告義務』」


槙理「3つ。魔術士は職務の場合を除き、魔術を平和利用以外の目的で行使してはならない。『平和義務』」


槙理「一見厳しそうに見えるけれど、慣れちゃえばどうって事ないわ。やましいことに使ってなければなおのこと」


樒「これでもまだほんの触り程度かぁ」


槙理「そうよ。魔術取扱者試験を受けたいんだったらテキスト隅々まで読んできちっと復習しときなさい。以上!」


樒「本当に1年でどうにかなるのかな……」


~終~

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