第十章「雪月」

「なぜ、そこまでして俺に、俺たちに肩入れする?俺じゃなくてもいいはずだ。何で」






「それは、わらわの産みの親が関わっているからじゃ」



「産みの親?」




「正確には、わらわを吸血鬼にした吸血鬼」



「名前は?」





もしかしたら。


もしかしたら俺が探している人かもしれない。



最初から予想していた。


雪鬼がどこか懐かしく思う事。だけど、何かが違う事。


同じ匂いがするが、雰囲気が全く違う。




雪鬼と正反対だった気がする。




気がするだけで、正確には分からない。



だって思い出せないんだから。




何かの本で見たことがある。



人は自分にとってよっぽど不都合なことや、トラウマの記憶を消去する働きがあると。




多分、そういうのだと思う。


でも、俺がその人に抱く思いはただただ愛おしいって言う事。




その人に何か、ひどいことを言われたとしたらもっと感じる思いは違うはず。だから俺はこう考えた。



俺が、何らかの理由でその人を傷つけてしまって、そしてその人のショックな顔が忘れられなくて消去した。






だって、その人に何故か申し訳ない気持ちでいっぱいだから俺が傷つけたに決まってる。



それで、記憶が消えて自分だけ楽になるなんて勝手だな。




どれだけ最低な男なんだ。



「わらわの主の名は、雪月。わらわと出会ったときも、月が綺麗じゃったの」



遠目で、そういうと雪鬼はゆっくりと目を閉じた。


まるで雪月を思い出すように。




あの人は、雪月というのか。




綺麗な人だったんだろうな。



それこそ雪鬼に敵わないくらいの、月が似合う女性だったんだろう。





「なぁ、一つ聞いてもいいか。もしその呪いが解けたらその雪月っていう人に会わせてくれるか」



「…雪月は。まぁたしかし解けたら現れるかもしれんな」




「…どういうことだ」



「雪月はこの桜に呪いがかかったすぐ後に姿を消した。多分呪いが原因なんじゃろうな。もしかしたら、初めの呪いをかけた張本人じゃないのじゃろうかのう」



雪鬼は元だが、主のことを罵倒するような言い方でその言葉を吐き捨てた。




それに怒りを覚えた、俺は再度手持ちの短刀で雪鬼の首めがけて切りかかった。

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