第九章「鬼は協力を求む」

「用件、か。 これは商談と言った方が良いのかもな。 単刀直入に言う。 この桜、呪いがかかっておりそれを解いてほしいのじゃ」



解くだと?






冗談じゃない。





呪いなどの類、俺は信じない。



そんな奴にそれを解いてほしいだと?



その手のものを得意とする奴らは目を輝かせるだろう。




しかし、それは素人がどうこうする問題ではないと思う。


だが、そんなこちらの事情もお構いなしに言い続ける。




「呪いも一つでない、七つじゃ。 お主らと同じ人間、わらわと同じ吸血鬼、そのほかにも死神などな。 

 だが重要なのそこではない。 その中にその短髪のお主と同じ呪い、狐呪がある。 桜の呪いを解けば恐らくそれも解けるだろう。

 どうじゃ、良い商談じゃろう」





確かにそうだ。




闇雲に呪いを解こうとするより、ずっと安心で手っ取り早い。




だが、本当に良いだろうか。



それが嘘だったら、取り越し苦労になったらもう匙を投げてしまうかもしれない。




いや、最高に#自棄__やけ__#が回って、最低に#自棄__じぼう__#になるだろう。




「それが嘘じゃない、って言えるのか?」




「わらわが嘘をつく理由がない。 わらわが嘘をついてなんになる。暇つぶしか?そんなことで暇つぶしにはならない」




「………信じていいんだな」



「信じなくても、無理やりでも協力させるつもりじゃかな」



か細い声で雪鬼は、何かを呟いたが俺には聞こえなかった。



しかし、その顔はとても切なくさっきまでの強気な顔が嘘みたいだった。





「…やっぱり、だめだ。




 俺は、信じきれない。

 すまん」





「なん……だと…」



「やっぱおかしいよ、呪いとか、吸血鬼とか。そんなのただの妄想だろ?」





それを聞いた雪鬼は、絶望にあふれた顔をした。




そして右目から、涙を溢れ出している。



しかし、左目からは不思議なくらい出ておらず、よく見ると左目が少しおかしい気がした。






おかしいが、綺麗なのは変わりない。






だが、右目より光が反射している気がした。



そう、まるでガラス細工のようだ。




「義眼……」




「お願いじゃ、わらわに協力してくれんか?」



「…………」








「……これで最後じゃから。最後だから。










 最後ですから……。













#私__わたくし__#に、協力してくれませんか」







泣き声混じりに雪鬼は、そう言った。

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