第八章「血の味は己の源」
そう図星。
期待しているのに、最後の最後まで頑なに肯定をしようとしない。
俺の悪い癖だ。
その姿は幼い子供のように見えて仕方がない。
そのため、実際に高校生がやるとなると酷く痛々しい姿になる。
そんな姿、この鬼には見せたくなかった。
だから泣く泣く雪鬼が吸血鬼だということを肯定した。
「お前が吸血鬼だって言う事は認めてやる。 俺たちに用があるんだろ、さっさと言え」
少し乱暴な聞き方になってしまったが、俺にとっては全力を尽くした。
これほど緊張したのは初めてかもしれない。
妹も感じていると思う。
妹と触れている手に限らずだが、汗を尋常なくらい流れていく。
単に夏の暑さでこうなったと片付ければいいのだが、それが出来ないので苦労する。
雪鬼と話すとき、何故か#途轍__とてつ__#なく感情が左右される。
それも冷たい感情の他に、温かいなにかすらも感じさせられる。
心臓の鼓動が速くなっていくのが分かる。
どくん。
どくん。
どくん。
どくん。
どくん。
どくん。
#どくん__・__#。
あぁ、もう。
うるさいなぁ、ちょっとだけ静かにしてくれない?
………
だがその音が収まる気配はしない。
いっそ心臓を潰したいくらいだ。
その音もまた、妹に届いているはず。
そんな恥態をこれ以上さらすわけにはいかない。
だがその音が収まる気配はしない。
どうしたら止まるだろうか。
雪鬼に視線を外せば止むだろうか。
その秀麗な美貌をこれ以上目にしなければ止むだろうか。
だがその音が収まる気配はしない。
どうしたら、止むだろうか。
どうしたら、こんな感情を表現できるのだろうか。
何もかもが初めてすぎて、取り乱れてしまう。
顔が歪んでいく感覚が強くなる。
それを抑えようと、唇を噛み締めた。
強く噛んだせいか、唇から紅い血が流れる。
慣れ親しんだモノだったからか、冷静さが戻ってくる。
傷口を己の舌で舐める。
それで口に鉄の味が熱く、だけど冷たく広がる。
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