従業員は妖精さん♪
「うわぁ! パパ! カニしゃんだよ! カニしゃん! 」
お風呂から出て部屋に戻るとちょうど仲居さん達が夕飯を持ってきてくれていた。
「おかえり~! 岳、柊♪ カニだよ♪ 美味しそう!」
2人はテーブルの上に並べられている料理を見て嬉しそうにはしゃいでいる。
「分かったから、落ち着いて食べようよ料理は逃げないから♪ 」
2人を落ち着かせて席に着いて俺達は食事を始める。
「ねぇママ、パパひどいんだよ! おうちだと泳いでもいいのにここじゃダメっていうの」
お風呂での出来事を吹雪ちゃんに話し始める。
「うぅ~ん、それは柊がいけないよ♪ もし柊がゆっくりお風呂に入ってる時に他の子が泳ぎ始めてバチャバチャしたら嫌でしょ? 」
吹雪ちゃんが諭す様に優しく説明すると柊は頷いて話を真剣に聞いている。
「そっか…、パパさっきはごめんなさい。今度はゆっくり入ります」
そういって謝ってくるので俺は柊の頭を撫でて口元についているソースを拭って
『おウチのお風呂では泳いでも大丈夫だけどおウチ以外じゃダメだから気をつけようね』と伝えると柊は『うん、分かったー! 』と言って笑顔でご飯を頬張っていった。
◆◇◆◇
「美味しかったね♪ 柊、明日どこに行きたい? 」
そういって吹雪ちゃんが柊に尋ねると
『パパとママと一緒ならどこでもいいよ』といって俺を見つめてくる。
「それじゃあ岳は、何処に行きたい? 」
吹雪ちゃんも俺を見つめてくる。
「それじゃあ温泉街にあった喫茶店に行ってみない? ちょっと気になったんだよね♪ 」
2人にそう伝えると
「柊は~、イチゴミルクとプリン食べる!」
「じゃあママは、カフェオレとミルクレープ食べよっかな♪ 」
本当にこの二人は思考が似てると思った。
◆◇◆◇
「いってらっしゃいませ」
「いってきましゅっ! 」
旅館の仲居さんに送り出されて俺達は温泉街の喫茶店に向かう。
「あぅ~っ、パパ、べろかんしゃった…」
柊が涙目でベロを出して訴えてくる。
「大丈夫か? う~ん、大丈夫そうだよ? 痛いの痛いの飛んでいけ~」
そういって柊の頭を撫でると嬉しそうに笑って俺を見つめたあと横に居る吹雪ちゃんの手を握って
「ママっ! あしょこ! あしょこにおまんじゅうある! 美味ししょう! 」
まだベロ痛そうなのに、それを忘れておまんじゅうですか…。本当に誰に似たんだか…。
そう思いながら俺は2人と一緒に喫茶店に入る。
「いらっしゃい? おやまぁ、珍しい組み合わせだね…。雪女にマンドレイクに人の子かい…」
喫茶店に入ると同時にカウンターに居るマスターに吹雪ちゃんと柊が人ではないことがバレてしまった。
「そんなに警戒しなくていいよ、私も人じゃないんだ」
そういうとカウンターに居るおばあちゃんマスターの背中から天使の羽と蝙蝠の羽が現れた。
「私は堕天使なんだよ」
お店の中に居た、他のお客さんが笑いながら
「ばあさん、めっちゃ驚いてるじゃん、ちゃんとここがどういう所か説明してやらないと」
お店に居た、常連と思われる男性がそういって帽子を脱ぐとそこには角が生えていた…。
「ここは異種族が集まる喫茶店なんだよ」
開いた口が塞がらないとは、まさにこのことを言う。
俺の喫茶店以外にもこんな場所があったなんて…。
そんなことを思いながら席に着くと
「ご注文は何にしますか! 」
店員の声は聞こえるのだが店員が見つからない。
「下! 下です! ここに居ます! 」
テーブルを見ると人形だと思っていた物がピョンピョンと飛び跳ねている。
「あっ、やっと気づいた! ご注文は何にしますか? 」
そういって彼女はメモ帳を取り出した。
「うわっ、パパ! スゴいよ! お人形が喋ってる! 」
「きゃぁっ、えっ、ちょっと! きゃぁ~っ
!! 」
好奇心旺盛な子供って怖いね…。柊が喋っている妖精? を逆さにして持ち上げてしまった…。
「パパ、スゴいよこのお人形さん! パンツ穿いてるよ! オムツかなぁ? 」
ゴワッとしてるけど紙オムツではないと思う。たぶんドロワーズとか言う下着だと思う…。
「降ろして! ちょっと女の子の下着見ないでよ変態! こら! そこの鬼! 笑うな! 見るな! 変態! 」
そういってバタバタ暴れている。
「降ろしてあげな柊」
そういって柊から妖精を受け取ろうと手を差し出すと
「あっ…」
パンツが脱げた妖精が手のひらに落ちてきた…。
「あわっ、あわわわわきゃぁ~!! 」
◆◇◆◇
「もう、やだ…。死にたい…」
俺の手のひらには泣きながら俺を睨む妖精が居る。
「ごめん、柊には俺からよく言っておくよ…」
そう伝えると妖精は立ち上がり
「責任を取ってください! 」
そういって指さし、俺を睨んでくる。
たしかに子供のしたことに責任を持つのは親の役割だよな…。
「出来る範囲で責任を取ります」
そういうと妖精は笑って俺の手のひらで土下座をして
「住む場所と食べ物、それと働いてお金を稼げる場所を提供してください! 」
そういって俺を見つめてくる。
「どういうこと? 」
思わず聞き返すと彼女は泣きながら
「家賃が払えなくて家を追い出されちゃったんです! だから、私に住む場所を提供してください! 」
そういって土下座をして俺を見つめてくる。
「それなら、ここの店長に直接交渉してみれば? ここでバイトしてるんだろ?」
そう尋ねると妖精は、首を横に振って
「ここでは無銭飲食をしちゃって、それの罰としてお仕事を手伝っているんです」
俺は、思わずマスターを見ると彼女は頷いていたので、どうやら本当の事らしい…。
俺は後ろを振り返り、2人を見ると2人ともOKサインをしてくれている。
「分かったよ、俺の家も喫茶店だから、そこで3食寝床つきで雇ってやる。ただし、給料は最低賃金の一時間795円だからな」
そういうと妖精は全力で頷いていた。
「そういえば名前は? 」
そう尋ねると彼女は笑って
「
こうして、俺のお店に従業員が1人入った」
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