売上UPのために出来ること

「パパー! おはよ♪ 」

「ぐふぅっ…」

 起こしに来てくれるのは嬉しいんだけど飛び込んでこないでくれると嬉しいな…。何か胃の中身が飛び出そうになるから…。


「パパみてみて! 」

 そういって俺が一昨日『しもむら』で選んだピンクのセーターとデニムのスカートを着ている。

「あっ、うん…。似合ってるよ♪ 柊、パパ起きるから立ち上がってくれるかな? お腹の上に乗られてると起きられないよ♪ 」

 そういって退いてくれるようにお願いすると柊は頷いて


「立ったよ♪ 」

「ぐふぅっ! 」

 俺のお腹の上に立った…。

「2人ともごは…柊パパから降りてあげて!」

 遅い、遅いよ吹雪ちゃん…。

 俺は口から泡を吹いてパクパクさせながらそう思った。

◆◇◆◇

「いらっしゃいませ♪ 」

 昨日ラジオで秘境のカフェと宣伝したおかげか一般のお客さんも来てくれてる。基本的に山の裏側にあるスキー場のお客さんだ…。

「きゃぁー可愛い! パパとママのお手伝い? 」

 お客さんは柊のことを見て『可愛い』といって頭を撫でている。


「コレがおしゅしゅめでしゅ♪ 」

 そういって柊が持っていったメニューにはこのお店で1番高いマンドレイクの実を使った極上パフェ1つ1,580円だ。

「本当~! どうしよっかな? 」

 それなりの値段だから迷ってるみたいだけど…。


「コレね、パパとママが作ってるのと~ってもおいしいの♪ ダメ? 」

 うるうるした瞳で柊がお客さんを見つめている。

「うぅ~ん、じゃあお願いしよっかな♪ 2つお願い♪ 」

「ありがとうごじゃいましゅ! パパー! パフェ2ちゅ! 」


 柊はそういってオーダー表を俺に渡してくる。

「良く出来たね♪ そしてナイス! 」

 そういって手を差し出すと

「だいじょーぶっ! コレをおしゅしゅめすればいんだもんね♪ まかしぇて! 」

 そういって柊は笑ってトテトテとホールに戻っていく。


「凄いね、みんな柊が可愛いからおすすめするパフェを注文してるよ♪ 」

 そういいながら吹雪ちゃんは紅茶を注いでいる。

「あぁ、すっかり看板娘だね♪ 売上もこの調子だと期待できそう♪ 」

 そういいながら俺もパフェとコーヒーを作っていく。

「それじゃあ、私も柊を手伝ってくるね♪ 」

 そういって吹雪もホールに戻っていった。

「しっかりしてる奥さんと娘だよ♪ 」

 そう呟いてホールをくるくると踊る2人の可愛い妖精を見つめていた。

◆◇◆◇

「「ありがとうございました! 」」

「おねえしゃんたち、また来てね♪ 」

 午後8時、最後のお客さん達が柊に『また来るねぇ~』と手を振って山を降りていく。

「ママ、お腹空いた… 」

 そういって柊は俺と吹雪の間に入って俺たちの手を握る。


「パパのリンゴのゼリーも楽しみ♪ 早くご飯にしょ? 」

 俺と吹雪は顔を見合わせて

「「それじゃあご飯にしよっか♪ 」」

 俺達は家の中に戻り少し遅い夕飯にすることにした。


「はーい、お待たせ♪ ハンバーグとほうれん草のお浸し、それとポトフね♪ 」

 作ってくれた料理を俺が温めなおす。

「やっぱりママのご飯おいひい♪ 」

 そういって口いっぱいに頬張る。


「うぅ~ん、やっぱり吹雪の料理には敵わないなぁ~」

 そういって俺はハンバーグを食べる。

「ママのご飯は世界しぇかい1だね!」

 そういって俺を見つめてくる。

「そうだよな♪ 吹雪の料理はメッチャ美味しいもんな♪ 」


 俺と柊はそういって吹雪ちゃんを見つめると吹雪ちゃんは顔を真っ赤にさせて照れている。

「パパ、ゼリー食べたい」

 おっと、デザートの催促がきた。

「じゃっ、じゃあゼリー取ってくるね♪ 」

 照れた吹雪ちゃんが逃げるようにキッチンに行ってしまう…。


「パパ、ママどうしたのかな? お顔真っ赤だったよ? 」

 たぶん美味しいって褒められて照れちゃったんだと思うな…。なんて言えないし…。

「きっとお部屋が暑かったんだよ♪ 少し待ってよっか♪ 」


 そういって待つこと3分…。

「お待たせ♪ 持ってきたよ♪ 」

 そういって持ってきたゼリーは少し凍っていた…。たぶん手袋外して用意しちゃったんだな…。

「いただきましゅ! 」

 そういって柊がゼリーをスプーンで掬って口に運ぶ。


ちゅめたい♪ だけどおいひい! パパおいひいよ! しゃりしゃりしてて、ちょっとちゅめたいけど…」

 余程美味しかったのかあっというまに食べてしまった。

「柊、パパのゼリーも食べる? 」

 柊に尋ねると彼女は頷いて残っていた半分のゼリーを食べ始める。


「吹雪、コレかなり美味しかった! どれくらい冷やしたの? 今年の夏に目玉料理としてメニューに加えたいんだけど…」

 そう尋ねると吹雪ちゃんは困った顔で

「うーん、どれくらい触ってたか分かんないんだよね♪ たまたま出来ちゃっただけだから♪ それに力を使うなら愛する家族のためだけに使いたいな♪ 」

 ということなので商品化は諦めることにした。

◆◇◆◇

「パパ一緒におふろ~! 」

 そういって柊が俺の手を握ってくる。

「ママもぉ~! 」

 吹雪と暮らすことになってから真っ先にじいちゃんの遺産のお金でリフォームした。風呂場は大きくなってサウナと水風呂を作ってもらった。

「ハイハイ、今行くからね♪ 」

 家族全員で俺達はお風呂に入ることにした。


 吹雪と柊の美人親子とラジオでの放送が上手くいってお客さんがたくさん来店してくれてよかった…。

「やったね岳くん! 今日はお客さんいっぱい来たね♪ 」

 そういって吹雪ちゃんは水風呂の中で身体を伸ばす。

「うん、これも綺麗な奥さんと可愛い愛娘のおかげだね♪ 2人ともありがとう♪ それとさ雪も落ち着いてるし家族旅行しない? 売上も良かったし、さすがに今日は1日立ちっぱなしで疲れた…。だから明日から新婚旅行も兼ねて3人で温泉宿に泊まりに行かない?」


 そう尋ねると2人は頷いて

「うんパパとママと一緒なら何処でもいいよぉ~っ!」

 なんて健気でいい娘なんだろう…。

「私は温泉玉子とか温泉まんじゅうとか美味しそう(゜ρ゜)いつ行く? 」

 こっちはどうやら食べ物らしい…。まぁ吹雪ちゃんらしいといえばらしいけど…。


「ママなにそれ? おいしいの? 柊も食べたい! 」

 どうやらその吹雪ちゃんの食い意地は柊にも伝染したらしい…。

「ご飯も美味しい温泉宿にしよっか? 」

 2人に尋ねると2人とも笑顔で頷いてくれた。

 明日から2泊3日で草津温泉に行くことになった。

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