人生疑似体験ゲーム

「こんにちは! 宅配便です♪ 」

 雪がまだ溶けずお客さんも全然来ない、ある晴れた日お店のドアが開き優兎ちゃんとシロたんがやって来た。

「宅配便? なんだろう? 」

 差出人を見ると俺の母親からだった…。


「母親からだ…? あれ? でも受取人が優兎ちゃんになってる…? 」

 不思議に思い疑問を問いかけると優兎ちゃんは頷いて

「お二人の宅配便は山の麓にある私の家で1度受け取ってからここまで持ってくるんです」

 なるほど、ということは俺の母親はここがこんな場所だったってことは知ってたんだよな…。あのババア…。


 文句の1つも言いたいがここに来たおかげ? で吹雪ちゃんと出会えたのだから結果的には良かったのかもしれない…。

「シロたん遊ぼ♪ 」

 町に買い物に行った時に猫じゃらしなど遊べる道具を買っていたので吹雪ちゃんは嬉しそうに猫じゃらしを構えてシロたんと遊び始めた。


 荷物を開けてみるとそこには『人生疑似体験ゲーム』と書かれたボードゲームが入っていた。

「何このゲーム? 」

 不思議そうに首を傾げていると

「これ魔法使いのあいだで人気のボードゲームですよ? どうして岳さんのお母さんがコレを持ってるんですか? 」


 正直知らん! 母さんはたぶんここのことも知ってたのに『ただの山の中腹にある喫茶店よ♪ 』とか言ってたからな…。

「岳さん! 吹雪さん! このボードゲームで遊んでみましょ♪ 」

 ということで俺、吹雪ちゃん、優兎ちゃんにシロたんの3人と1匹でボードゲームをすることにした…。


『さあ、始まりました! 人生疑似体験ゲーム! 実況は私、ゲームマスターがおこないます! ねこちゃんは性別はそのままで擬人化させてもらいます! 』

 ここは何処だ!? いきなり煙に包まれたと思ったらボードゲームの盤上に居るんだけど…。

『それじゃあ早速サイコロを振ってもらいましょう! 』


 俺達の前にサイコロが現れた。

「ちょっ、なんで私が人の姿になってるの? どういうこと? 」

 その声の方を見ると黒髪ロングの猫耳少女が居た。

「シロたん? シロたんなの? 」

 優兎ちゃんが猫耳少女に尋ねると少女は頷いて

「うん、私がシロだよ…」


 少し困惑してるのかシロたんは辺りをキョロキョロと見渡している。

『早くサイコロを振ってくれ』

 ゲームマスターがうるさいので俺達4人はサイコロを振ると俺は2、吹雪ちゃんは4

優兎ちゃんは6、シロたんは1が出た。


『OK、順番はこれで決まった! それじゃあ人生疑似体験ゲームを楽しんでくれ! 』

 優兎ちゃんの前にはサイコロが現れた。

「それじゃあ行きますね! えい! 」

◆◇◆◇

 ゲームは順調に進み大学進学コースと高卒就職コースの分岐点にやって来た。

「でた……俺、高卒でサラリーマンだって…」

 まさかの高卒サラリーマン…。

「私は高卒料理人よ…」

 シロたんは料理人か…。


「私は赤門が有名な京大に進学だって! やった! 」

 優兎ちゃんは国内トップの有名大学かよ…。

「私はMARCHで有名な明慈大学に合格だって! 」

 まさかの吹雪ちゃんも進学…。


「あれだね、私達勝ち組だね! でも私は岳くんを見捨てないからね! 」

 吹雪ちゃんはそういって憐れみの目で俺達就職組を見つめている。

「ねぇ、いくらゲームとはいえ少しイラッとしたから絶対にあの2人を見返してやろう岳さん! 」

 俺とシロたんは結託した。


~4年後の吹雪ちゃん&優兎ちゃん就職~


「えっ、どうして京大卒業したのにメイド喫茶に就職なの!? しかも上司の料理人がシロたん! 」

 ニヤリ←(シロたん)

「私はOLだよ…。課長が岳くんだった…」

 ニヤリ←(俺)


 俺とシロたんは吹雪ちゃんと優兎ちゃんが大学編で青春を謳歌している間に俺達はひたすら出世街道を突き進んでいた。

「「形勢逆転だね!」」

 俺とシロたんはハイタッチをしてブイサインをして喜んだ。


「さてと俺の番だね! 」

 そういってサイコロを振ると3が出たのでマスを進むと…。

『おめでとうございます! 恋愛マスです!サイコロを振ってみてください! 』

 ゲームマスターの指示通りサイコロを振ると…。

「6? これで何が? 」


『職場内恋愛発生! プレイヤー岳はプレイヤー吹雪と付き合うことになったぜ! フゥーッ! 』

 なんかコイツうざいな…。

「えっと…。末永くお願いします! 」

 お付き合いなのに重いのきた!?


~数年後~


『おめでとうございます! 結婚マスです! おめでとうフゥーッ! 熱いぜお二人さん!』

 俺はゲームの中でも吹雪ちゃんと結婚することになった。

『そしてここで運命のサイコロだぜ! フゥー! 旦那さんはこっちのサイコロを! 奥さんはこっちのサイコロを振ってくれ!』


 指示通りサイコロを振ると

『出たぜ運命のサイコロ! プレイヤー岳は脱サラしてカフェ経営だ! 頑張ってくれ!』

 現実と大差なかった…。


「私は岳くんについていくよ! 」

 それしか選択がないけどね…。


~さらに2年後~


『イェイ~! 来たぜ運命マス! 今回はコレだ! プレイヤー吹雪の妊娠だ! さあサイコロを振ってくれ! 』

 サイコロの出目は1と2と3だけだ…。

『出た目は2! ということは双子だ! やったなパパ! さあ子供の名前を決めてくれ!』


 マジかよ…。

『男の子と女の子だぜ! 』

ほむらしずくで! 焔が男の子で雫が女の子だ!」

 まさか今この名前をいうとは…。

「あっ、その名前このあいだベットの中で…」


 だからそういうこと言っちゃダメだって吹雪ちゃん…。

「そうだよ、このあいだ2人で考えた名前だよ…」

 そんなことを俺と吹雪ちゃんが喋っていると近くで優兎ちゃんとシロたんの声が聞こえる。


「私達もペアになっちゃった! 」

 優兎ちゃんがそういうので2人を見るといつのまにか彼女はメイドから敏腕経営者になっていてシロたんはCEOになっていた…。


 その後、俺達の喫茶店はシロたんCEOによって買収された…。

「私の1人勝ちだぁ~っ! 」

 結果シロたんの1人勝ちだった…。

◆◇◆◇

「楽しかったね♪ シロたんも人の姿になって可愛かったし! また遊びにきますね! 」

 そういって優兎ちゃんとシロたんは帰っていった…。

「2人で考えた子供の名前、覚えててくれたんだね岳くん…。ねぇ岳くん…。私、岳くんとの子供が欲しくなっちゃった…」


 次の日、寝不足で大変でした…。

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