この実何の実? 気になる実!

 おぉ、木の実が出来てる…。

 神山さんから貰った種が芽を出し木になって実をつけるまで1ヶ月もかからなかった。

「あっ、出来たんだ! ねぇコレでケーキって作れるかな? 」

 そういって吹雪ちゃんが俺を見つめてくる。

「とりあえず食べてみなくちゃ味が分からないからひとまず切ってそのままで食べてみよう! 」


 そういって俺は木の実をとりあえず真っ二つに切る。

「ギャア~ッ! 」

 何処からか悲鳴が聞こえた気がするけど分からないので切った木の実の皮を剥こうと切った半分を手に持つと赤い果汁が溢れてくる。そして内側を見ると種が綺麗に半分に切れていた…。

「うわぁ~! スゴい! 綺麗に半分に切れたね! この種って切られると人の叫び声みたいな声を出すんだよ! 」


 凄く切りづらい…。

「こうやってエイッ! ってやると声みたいなのが聞こえるの! あっ! でも切った時に出てくる赤い果汁は鉄みたいで不味いから舐めないほうが良いよ! 」

 それもう血だよね? 綺麗に剥いていったらどうなるんだろう?


 俺は木の実を綺麗に剥いていくことにする

「うわぁ~! 綺麗だね! 切れてないじゃん! スゴッ! 」

 皮を切らずに剥けるのってスゴいのだろうか? 修行してたイタリアではカフェアートもそうだがフルーツの飾り切りが出来て当然の国だったぞ…。

 さて、皮を綺麗に剥いたけど、ここからどうやって切ろう…?


 俺はゆっくり慎重に切り込みを入れていく。

「おっと、待つんじゃ! きちんと切ってからじゃないと死ぬぞ岳…。ちゃんと伝えてなかった儂がマズッたわ! 」

 そういって神山さんが何処からか現れた。

「いやぁ~っ、驚かせてすまんの! その果実は『マンドレイクの実』と言っての美味しいんだが中の幼体ってからじゃないとコッチが殺られるんじゃよ…。でも禁断の果実と呼ばれるほど美味しいんじゃよ! 」

 いろんな意味で禁断だわボケぇ!


 そんなことを思っていると綺麗に皮を剥いたマンドレイクの実が輝き始めた…。

「しまった! 2人ともコレを採ったのはいつ頃じゃ! 」

 どうしたんだろうやけに急いでる感じだけど…?

「1時間前かな? 」

 そう答えると神山さんは驚いた顔で

「幼体から成体に変わってしまう! 2人とも耳を塞ぐのじゃ! 少しは軽減出来るはずじゃ! そのあとは成体になったマンドレイクを殺るぞ! 」


 光がより強くなり、次第に収まっていく。

「パパ? ママ? 」

 マンドレイクの実があった場所には女の子がちょこんと座って俺と吹雪を交互に見て『パパ? ママ? 』と尋ねてくる。


「えっ? パパ? 」

「ママ? 」

 俺と吹雪はそれぞれを指差し女の子に尋ねると『パパ! ママ! 』と嬉しそうに俺達のもとに飛び付いてくる。

「ふ~む、どういうことじゃ? 何故このマンドレイクは鳴かないんじゃ? 」

 そんなことを俺に聞かれても困ります。


「でも良かったのぉ~、マンドレイクは親と決めたものを傷つけることは無いし安心じゃ! 」

 いや、こっちの身にもなってくれ! いきなりパパだぞ! どうなってるんだよ!

「ママ、ごひゃぁん」

 そういって吹雪ちゃんを見つめている。


「ねぇパパ、この子になんて名前つけよっか? 」

 う~ん、焔が火で雫が水だから木とか草に関係ある名前がいいな…。

ひいらぎでどうかな? クリスマスも近いし、それに花言葉の用心深さとか案外あってると思うんだよね♪ どうかな? 」

 吹雪ちゃんに尋ねると吹雪ちゃんは頷いて

「いいねその名前! よし、あなたはこれから柊ちゃんだ! ようこそ我が家へ! 」

 そういって柊ちゃんに抱きつくのは良いんだけど…。必要最低限のベビー用品を買ってこなくちゃ…。


「それじゃあ儂は帰るぞ! 」


 俺は神山さんをスノーモービルで送りつつ麓にあるベビー用品専門店『北松屋』で色々買うことになった。

◆◇◆◇

「ただいまー」

 大荷物を持って玄関を開けるとそこにはペタンと座った柊がいた。

「おかりー! 」

 どうやら柊は人間で言うと3歳ぐらいの知能は持っている様だ。だから俺が買ってきたのは本当に最低限のベビー用品だ。


「ただいま柊、ここで待っててくれたの?」

 そう尋ねると柊は頷いて

「パパしゅき! ママもしゅき!」

 赤ちゃんってこんなに可愛かったっけ?

「俺も柊とママのこと大好きだよ♪ 」

 そういうと柊はニコニコ笑って

「ママ、パパがママと柊のこと大しゅきだって! 」

 と吹雪ちゃんに報告をする。


「ねぇ柊、弟と妹どっちが欲しい? それとも両方? 」

 なんてことを聞くんですか吹雪ちゃん!

「えぇ~っとね? 柊はどっちも! 私おねえしゃんになる! 」

 そういって柊は座りながら胸を張っていた。


「蝋燭も買ってきたからケーキに立てて誕生日を祝うよ♪ 今日が柊の誕生日だからね♪ 」

 ついでに誕生日プレゼントも買ってきたから渡してあげよう。

「ほんと? いいのパパ? 」

「うん、何が食べたい? 」

「イチゴ! 」

 ちっちゃい女の子はみんなイチゴが大好きなんだな…。


「吹雪も今日はイチゴのケーキで良いかな?」

 柊を肩車しながら隣で俺達を見つめる吹雪ちゃんに尋ねると吹雪ちゃんは頷いて

「なんだか本当の家族みたい♪ 柊のためにも早く妹か弟をつくってあげなくちゃですね? 今日は寝ないでくださいよパパ♪ 」


 家族が1人増えたことによってもっと頑張って増やさなくてはいけなくなった…。

 次の日、俺は足腰がガクガクに対して吹雪ちゃんは肌が潤っていた。

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