今日から一緒に!

「うぅ~っ? 」

 リンリン鳴る目覚まし時計を止めて起きあがるといつもの風景ではなかった…。

「そっか俺はジイちゃんの家に引っ越したんだった…」

 そういって1階に降りると…。


「あっ、おはよう♪ 岳くん♪ 」

 そういえば彼女も昨日から一緒に住むことになったんだった…。

「おはようございます。吹雪さん」

 そういってお辞儀をすると


「もう! そんなに固くならないでください!私のことは恋人なんだから吹雪って呼んでください♪ 」

 いきなり名前呼びは抵抗があるなぁ~

「じゃあ吹雪ちゃん? で良い? 」

 そう聞くと吹雪さんは頬を膨らませて

「ダメです! 呼び捨てにしてくれないと距離を感じちゃいます! 岳くんは私のこと本当に妻にしようと思ってるのか心配になっちゃいます! だから吹雪って呼んでください! 」


 どうしても譲らないみたいなので

「分かった! 吹雪、おはよう♪ 」

 そういうと嬉しそうに微笑んで

「うん、おはよう岳くん♪ ご飯出来てるよ♪ 早く食べよ♪ 」

 俺の手を握ってテーブルに引っ張っていく

「はい、どーぞ♪ 」

 

 おぅっ…。作ってくれたのは嬉しいんだけど、どれもこれも凍ってる…。

「うぅ~ん、味は良いと思うんですけど私が作ると何故か凍っちゃうんですよね? 」

 そういって鮭をガリガリと削っている。

「うん、料理は俺が温かい物を作るよ。あれ? でも昨日のココアは凍らなかったよね? 何で? 」


 不思議に思い、吹雪ちゃん(心の中ではちゃんづけすることにした)に尋ねると

「あっ、それは私以外の人が作ってくれた料理だから大丈夫なの! 私やお母さんが料理をすると冷たくて凍った料理になっちゃうの」

 そういって料理を捨てようとするので

「待てって! 捨てるなよ! 勿体ないだろ! 俺がレンジでチンすればいいだけなんだから! それに一生懸命作ってくれた吹雪の料理を食べてみたいし…」


 そういうと吹雪ちゃんは恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俺の肩に…あれ? 何か肩がひんやりしてる?

「ちょっ!吹雪ちゃん! 肩! 俺の肩が凍ってる! 服の表面だけだけど凍ってる! 凍ってるから! 」

 そういうと吹雪ちゃんは気づいたのかサッと肩に触れていた手を離す。

「岳くんゴメン、私感情が昂っちゃうと触れてる物だったり周りの空気を凍らせちゃうの大丈夫? こんな私のこと嫌いになったよね? 」


 明らかに落ち込んでるよ…。

「別にこんなことで嫌いになったりなんかしないよ? 誰にだって何かしら欠点はあるから問題はそれをどうやって克服するかだよ! とりあえずコレを着けてみてくれるかな?」

 そういって俺は吹雪ちゃんに毛糸の手袋を渡す。

「それでもう1回さっきのことを思い出して触ってみてくれる? 」

 吹雪ちゃんは恐る恐る俺の肩に掴まり何かを考え始めたのか静かになった。

「好き、大好き! 私の全部を岳くんにあげたい…」


 かなり恥ずかしい告白をされたのだけど肩は凍らず周りの空気は冷たくなる。

「吹雪ちゃん、成功みたいだよ! やったじゃん! 予想通りだよ! 」

「好き、好きです! 私は岳くんのことが大好きなんです! だから結婚してください! 誓いのキスをしてください! 」

 どうしよう吹雪ちゃんが目をグルグル回してる…。一瞬なら大丈夫かな? しっかりしてくれないと困るし…。

「俺も好きだよ♪ 」

 そういって彼女の唇にキスをする。


「えっ!」

 吹雪ちゃんは顔を真っ赤にして煙を出して倒れてしまった…。

「やっぱりマズかったかな? 」

 そんなことを思いながら、とりあえず吹雪ちゃんをソファーに寝かせることにした。

◆◇◆◇

『俺も好きだよ♪ 』って言ってキスしてくれた! えっ!夢じゃないよね? どうしよう胸がドクドク脈打ってるよ! 私のドキドキ岳くんは聞こえてないよね?

 目を覚ました私はソファーの上で1人悶えている。

「だって私の片思いだと思ってたのに岳くんが! 岳くんが私のこと大好きだよって! んん~! 」

◆◇◆◇

 起きたのには気づいたんだけど、どのタイミングで声をかければ良いのだろう…?

「起きた? ご飯温めたから一緒に食べよ♪ 」

 起きて悶えている吹雪ちゃんに声をかけると彼女はバッと起き上がり

「うん食べよ♪ そっ、それと私からもその…キッ、キスしたいから目を瞑って! 」

 顔を真っ赤にして唇を突き出してくる。


「分かった、だけど長くキスしてると凍って唇がくっついちゃうから一瞬ね! 一瞬だからね! 」

 そういって目を瞑って彼女のキスを待つ。


 チュッ♪


「はい、目を開けてもいいですよ♪ 」

 恥ずかしそうに顔を真っ赤にした吹雪ちゃんが直ぐ目の前に居た。

「私以外の人とはしないでくださいね! 」

 そういってテーブルについて食事を始めた。

「うん、美味しくて丁度いい味付け! あれ? もしかしてこの味付けって俺に合わせて薄口にしてくれてる? 」

 そう尋ねると吹雪ちゃんは首を横に振って

「うん、最初は岳くんが京都の出身だって山中おじいちゃんに聞いて岳くんに好きになってもらう為に作って食べてたけど、それが慣れちゃって…。今ではこの味付けが普通だよ♪ 」


 そういって吹雪ちゃんはスプーンによそったヨーグルトを俺の口元に運んでくる。

「えっ…と…? 」

「コレ美味しいですよ♪ 少しシャリッとさせたので食感が違くて冷たいのでオススメです! 」

 気づいてないのかな、これって俗にいう『ア~ン』だよな?


 そんなことを事を思いながらも流されて結局『ア~ン』をすることになった。

◆◇◆◇

「私の料理美味しかった? 」

 朝食の食器を洗っていると隣で洗った食器を拭きながら吹雪ちゃんが嬉しそうに俺を見つめてくる。

「うん、正直ビックリした。かなり美味しかったよ♪ ありがとう」

 正直な感想を吹雪ちゃんに伝えると誉められて嬉しいのか顔を真っ赤にして微笑んでいた。

 

 何だろうとっても可愛い生物が隣に居て萌死しそうなんだけど!

 そんなことを思っていると車が停まる音がした。


 カランカラン♪


 ドアベルの鳴る音がする。

「いらっしゃいませ! 喫茶店『スノードロップ』へようこそ♪ 」

 そういって俺たちは微笑んだ

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