間章
間章 ああ、運命の匂いがする
ああ、運命の匂いがする。
「やはり君に注目していて正解だったよ、クーガー。君のおかげで、七つの大罪の災厄の竜、強欲のマモンを解放できそうなのだからね?」
聖職者エイブラム・ツェデクは、いつの間にか手に入れた多数の金貨を手にして微笑んだ。
「
ぺろり、と指をなめたエイブラムは、そのまま目を瞑って
「いやはや、どこぞの間諜に探られたかと思って焦ったが、実はただの下着泥棒騒ぎだったとはね。――いや、それもカモフラージュかもね? 下着泥棒のように見せかけて実は
と色々と言霊を吐いた。
返事は無い。
「竜殺しの血の忌々しさよ」
へらへらと笑いながらも、エイブラムは「憎いやつが多い。
「運命の血の連中も気に食わない。不屈の海賊どもも、
指をなめ続けるエイブラムの指先から滴るものは、血。そこには濃密な悪意の匂いが宿っていた。
「――ああ、とてつもなく
エイブラムの目の前には、
怠惰のクーガー。
嫉妬のオットー。
憤怒のビルキリス。
強欲のエイブラム。
傲慢のヴァレンシア。
色欲のエローナ。
暴食のソイニ。
そこに並んでいるのは、目を疑うような
「過半数が死ねば、十分だろうね? いやはや、来年の『野外実習』では誰か死んでもらわないといけないね? それとも違うだろうか、『魔術祭』がいいだろうかね? ――まあいい。どうせ災厄に見舞われるんだから、うまく手綱を握らないといけないね?」
くつくつと笑うエイブラムは、「災厄ではない、千年に一度この世の悪を浄化するのだ。そうとも未来を選ぶのだ。
――ああ、運命の匂いがする。
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「あのエイブラムの小僧は何かを勘違いしているようだが、我らが委員会の基本理念に変更はない」
「ああ、我らの目指すところは奴の目指すところではない。それまで奴には、精々駒として動いてもらうとしよう」
「奴は所詮はお飾りよ。最も魔術の才能に溢れ、最も大罪に愛されただけの、ただの青二才」
「ああ、奴は結局、最もエーテルに満ち溢れた忌み子なのだ」
「我々の理念は変わらぬ」
「エーテルの克服こそが我らが幸せ」
「よって、我々は千年に一度訪れる滅びの時を、克服せねばならんのだ」
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