叫び

大切な人を守って死んだ男がいました


男が助けた大切な人は

泣いて泣いて泣いて

枯れた声で叫びました

なぜ置いていった、と

なぜ守った、と

最期まで一緒にいたかった、と

あなたのいない世界に意味などない、と


その叫びは天をも貫いて

男の魂に届きました


大切な人の叫びを聞いた男は

大粒の涙を流しました

ぐじゃぐじゃの顔で叫びました

生きててほしい、と

君にはまだ死んでほしくない、と

最期に君を守れて光栄だ、と

君のいないこの世界は地獄だ、と


どれだけ二人が叫んでも

時は残酷なほど

真っ直ぐに

戻ることなく

先へ進みます


男はただ過去を振り返り続けます

大切な人はゆっくりと未来へ顔を上げます



なにが正しいのでしょう……


なにが間違いなのでしょう……

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