第5話 すくーる でいず

 私は早々に学校に行かなくなったが、華咲さんのおかげで、またチャンスを与えられた。


「のあちゃーん、学校行くよー」


 いよいよ、学校へ――


「はい、ストップー。メガネはだめー」


 唯一の抵抗だったのだが…、華咲さんに言われちゃ仕方ないな…。

 登校中、やはり華咲さんから聞いたように猫が群がってくる。


「華咲さん、猫…すごいですね」

「なんでだろうねー、可愛いからいいけどねっ」


 いつもの華咲さんとは違い、優しそうな雰囲気の裏でどこか怒っているようだった。


「華咲さん、どうかしましたか…?」

「のあちゃん…」


 彼女は急に私の方を向いて立ち止まり、私の手を握り言い放った。


「そ、その付け、やめてほしいの!その…距離があるように思えて…」


 彼女はあまり、否定をするタイプではなさそうだけど、ずっと気になっていたのだろう。私は申し訳ないことをしたと思った。


「ごめんなさい…。でも、そう言ってくれて嬉しいです」

「ついでに、、敬語も…なんかね?

これからはもっと親しくしよっ」


 他人と敬語でしか話したことがない私にとって難しいことではあったが、

彼女のためなら――


「あ…ありがとう…、真愛ちゃん…」

「キャー!その照れながら言うの、

新鮮で可愛すぎるよぉっ」


 私の腕をペシペシとはたきながら、真愛ちゃんはまた歩き始めた。

 このとても愛嬌あいきょうのある彼女に惚れていったのだろうか、

猫達も私も。私も一応ネコだけど…。

 こうしてますます仲良くなったであろう私たちは、こんな話をしながらとうとう学校へ着いてしまった。

 久しぶりに教室の扉を開ける。前のメガネをかけてた時とは、違う私に周りがザワつく。悪口を言ってたらどうしよう…。


「白神さんっ」

「は…はいっ」


 今まで、のあちゃんとばかり呼ばれていたせいで反応が遅れ、何か言われるのかと不安になった。


「可愛いね!入学式にこんな可愛い子いたっけ?」

「学内一の可愛いさだよ!いーなー」


 これはほんとに私に対してなのかというぐらい、クラス中の生徒が言い寄ってきた。


「あ…ありがとう」


 教室の扉が開く。


「みーんな何してんだー。はい、席に着けー。おっ、白神じゃないかー!心配したぞー!」


 席に着いても尚、ザワついている

クラス内。


「はい、みんな注目ー。この子が白神乃彩ちゃんだー。自己紹介できるか?」


 席を立つ私に皆が注目する。後ろの席にいる真愛ちゃんが口パクで応援

してくれている。


(がんばれっ)

「わ、私は白神乃彩ですっ。み、みんなと仲良くなれたらいいなと、思ってますっ。よろしくお願いします」

「よっ!学内一の美女っ!」


 クラスの男子が言い放った言葉で、

ドッと拍手がわき起こった。


「ありがとう!みんな仲良くしろよー」

「はーい」


 第一歩をしっかりと歩めた私は、

これからの学校生活を楽めそうだと、

ワクワクしながら気を引き締めたのであった。

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わたしはヒト科ネコ属の女の子 儚舞 @nari9113

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