第4話 ぷりてぃー ほりでい
今日は学校が始まってから2週目の
休日。実はあの時以来、学校に行けて
いない。もはや、学校からの電話すら
受け取っていない。華咲さんはどう
しているのかな、なんて考えて
いると、
「宅急便でーすよー」
玄関の向こう側から声がする。
すごくのんびりしてそうな宅急便、
なんとも言い現せないおっとりとした
話し方、華咲さんだ。恐る恐る扉を
開ける。今日は華咲さんのみ
のようだ。
「こんにちはー、遊びに来たよー」
「こ、こんにちはっ。ちょ、ちょっと
片付けてきますっ」
「待ってるねー」
何も考えずに扉を開けたが、部屋の
中は――。ということでマイナス
印象になりそうなものだけ片付けて
いこう。洗濯物、ちょっとしたゴミ、
制服…。ようやく人を呼んでも大丈夫
そうな部屋が出来上がった。
華咲さん呼ぶため玄関の扉を
開ける。油断していた。また、
猫が――。
「ごめーん、暇してたからー」
「い、いえっ!どうぞっ」
彼女を部屋へ上げたものの、趣味の
戦闘ゲームのソフトを片付け忘れて
いた。それに気を取られ…
(変な趣味だとか思われたらどうしよう…)
「ねーねー、のあちゃん」
「は、はいっ」
「最初会ったときから思ってたん
だけど、なんで色付きメガネ
かけてるのー?」
「えっ、えっとそれは…」
趣味の戦闘ゲームどころでは
なくなり、むしろそれより重要で
ある、私自身の
一旦閉じた。でも、この子なら大丈夫
という思いの中、嫌われたら
どうしようと思ったが、葛藤の末、
生まれて初めて自分からこのことを
話した。
「私…目の色が違うの…」
「へーすごーいっ!見せて見せてー」
震えながらメガネを取る。
「えっ、かっ…」
「ご、ごめんなさい私っ…」
「かっ、かわいい…っ」
「えっ…?」
思ってもみない感想に少々
動揺した。まさか、
かわいいなんて――
「コンタクトにしなよーっ
絶対かわいいからっ」
「いえ…私…別に眼は悪くないん
です…」
「そうだったんだぁ。なら裸眼で
大丈夫だねっ。安心してっ、からかう子達はコレでっ」
そう言い、小さな拳を握り、
効果音を付けながら前方に突き出す。
私はクスクスと笑った。
「あっ、のあちゃんが笑ったぁっ!
…あれ、泣いてるの?」
「え…いや…嬉しいんです」
自分でも気づかなかったが、私は
華咲さんの言葉で嬉しさのあまり
泣いていた。
「そうだ、次から一緒に学校
行こうっ!私、家近いからっ」
「は、はいっ!分かりました!」
初めて華咲さんの家が近くで
あったことを知り、彼女に色々
興味が湧いてきた。でもその前に、
私のことをちゃんと伝えなきゃ…。
この日は一日中、華咲さんと部屋で
過ごした。初めて味わうこの空間が、
まだ続けばいいなと思うほど、私の
中で思い出に残る重要な日になった。
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